再びインラントへ
「ジェロ様、もう少し粘っても良かったのではないのですか?」
「いや、あれだけで十分じゃないかな。これ以上の兵糧をなくすと、ミュンハーフェンの街で略奪が起きる可能性もあるし」
「は!そうですね」
避難する住民達がルグミーヌ王国の領土内に逃げ込む目処がついたこともあり、ミュンハーフェンに残っていたジェロ達も撤退を決める。
目論見通り、攻めて来た軍勢の荷馬車などを燃やしつつ、城門付近も魔法の壁を作ることで実際の戦闘は発生させずに済んでいる。ただ、兵糧などを燃やされた帝国軍の心理的損害は大きい。
一方、ジェロ達はワイバーンに乗ったコンスタンや≪飛翔≫ができる者と悪魔達だけが戦闘に参加していたため被害も出ていない。
「思ったよりも、他国に逃げたいという人が多かったね」
「いえいえ、ここが故郷だからという理由で残った人の方が多いと思うぐらいですよ。帝国と組んでいた一部の商人ぐらいしか残らないと思っていましたので」
「そういうものかな」
結果的に老人や子供も含めて5,000人規模の避難民が発生している。
『“長坂の戦い”みたいにならなくて良かったよ』
『前世の話?』
『中国って国の三国時代に、劉備って人を慕って多くの民が一緒に逃げて、その歩みの遅さで敵兵からやられまくった話があってね』
『それもあって、避難するための馬車を買ったり護衛を出したり早々に出発させたりしたのね』
ミュンハーフェンを脱出した後は、空を飛んで北東のインラントに向かうだけである。ムスターデ帝国内では目立たないようにかなり上空を飛ぶが、ラーフェン王国内に入ると、以前にいた帝国の増援部隊がいないかを確認しながら北上する。




