ミュンハーフェンでの拠点
「まさか、住宅の価格がここまでとは……」
「ちょっと見込み違いでした。すみません」
アルマティとリスチーヌが地龍ドレイクの魔石をいくつか持って、冒険者ギルドに納品に向かった結果である。
その魔石の価値そのものは他の国や地方と変わりなかったのだが、入手した貨幣を不動産屋に持参したところ、あまりに不動産価格が安かったのである。
「先日に私が確認に行ったのは旅の冒険者が借家を探す感覚でした。その層向けならばそれなりに普通の価格だったので油断しました。このミュンハーフェンでは家を購入する層が全然いないようです」
「そうか、確か貧困が広がっているという話だったよね。この街では帝国軍の上層部と一部の商人ぐらいしかたくさんのお金は持っていないし、家を買う中間層がいないから不動産も売れないんだね」
「ですので、ついでの話で聞いた購入金額の安さに驚いてしまい、つい購入の手続きをしてしまいました……」
「まぁ良いんじゃないの。つかまった騎兵隊員たちの家の近くだし、何かと都合が良いかも。これから合流してくるメンバが増えるならば、なおさら下手なところでの借家よりも」
「そう言っていただけると。ありがとうございます」
『引越しそばの風習は無いんだよな』
『何それ』
『ん、まぁ引越しの挨拶の定番と言われていたけれど実際には経験したことないなぁ』
貰い手が重たく取らないように、街で買える普通のパンを手土産に近隣に挨拶してまわるジェロたち。
「あら、コンヴィル王国のご出身ですか?冒険者の方なのに家を買われるなんて珍しいですね」
「貧乏性なので、家賃を払うより買った方がいいかなと。この近くの冒険が終われば、また出ていくかもしれませんが」
「そうですか……確かに昔は豊かな国でしたが、他国の方が長居するほどのものはありませんからね……」
怪しまれて衛兵に密告されたくないので、当たり障りのない会話に努めようとするが、住民からは明るい話題がなかなか貰えない。




