日本刀
ジェロが鞘に入った刀を大事そうに抱えて自分に割り当てられた部屋に戻り、鞘から抜いた刃を見てニヤニヤしている。
『ジェロ、魔法以外でそんな様子なのは珍しいね』
『これは日本刀。きっと昔に俺のいた世界から伝えた転生者か転移者が居たんだろうね』
『ふーん。で、そんなに何が良いのかい?前線に出るのは嫌なんでしょ?』
『あぁ前線に出る出ないは関係なく、日本刀が良いんだよ。厨二病と言われても、やはり日本男子は日本刀が、ね』
『何のことか分からないけれど。手入れが難しいと言っていたけど、それは大丈夫なの?既に少し傷ついているようだよ』
『あぁー本当だ。どうしよう……』
落ち込んだジェロをしばらく見ていたヴァルが話しかけてくる。
『仕方ないね。これからもっと魔力をくれるわよね?』
『どういうこと?』
『この刀に私の半身、写身を宿らせてあげようかと。そうすると私の強さに応じて刀も強くなるし魔力を消費するだけで刀の傷は直せる。もちろん世に言う魔剣、魔刀になるから分かる人には分かるようになるわよ』
『それまた憧れる単語だけれど、実際に魔剣なんてこの世界で見たことないよ。実在するの?』
『ガニーの街ぐらいでは少なかっただろうけど、この街にならそこそこあるんじゃないのかな』
『じゃあそこまでは目立たないで済むのかな。じゃあお願いできる?』
『分かったわ』
目の前に浮かんでいたヴァルが刀に吸い込まれるように消えて行く。
『魔力を注いで』
『あぁこんな感じかな』
ジェロが魔力を注ぐと刀に存在した傷が消えていく。
『あれ?そういえばヴァルはどこに?』
『刀に宿ったから姿を消したのよ』
再び目の前にヴァルが浮かぶのを見て安心する。
『この次元での依代ができたから、いつもは姿を出さなくても良いかなと。魔力の温存ができるし。出ようと思えば出られるから心配しないでね。この魔剣、大切に扱ってね』
『あぁ、ありがとう、ヴァル』




