司祭ディミトリ
「テルガニ子爵はいらっしゃるかな?」
宿屋にザールが訪ねて来る。
「ザールさん、どうされたのですか?用があればお伺いしますのに」
「いや、こちらの方が子爵へご連絡を取りたいといらっしゃいましたので、ご案内させて頂きました」
「豊穣の女神デメテル様の司祭、ディミトリと申します。突然申し訳ございません」
「は、ジェロマン・テルガニでございます」
『もしかして、女神の名前を使ったことを怒られるのかな』
『そんな雰囲気では無いわね』
宿屋ではあるが一応は貴族であるジェロの部屋は応接セットもあり、そちらに座って貰う。
「テルガニ子爵はガニーの街のご出身とか。あそこの司祭ローランスは私の後輩でして。こんなにご立派になられた方をあの街から。大変光栄です」
「はぁ」
「不躾なお願いで申し訳ありませんが、王都のデメテル様の神殿付属の孤児院に足をお運び頂けないでしょうか。こんな立派な先輩がいるとあの子達に姿をお見せ頂けましたら、何かと卑下しやすい子供たちの励みになると思いまして」
「そのようなことで私が貢献できるのでしたら喜んで」
「ありがとうございます!孤児院出身という過去に触れて欲しく無いと言う方も多い中、テルガニ様は孤児院のご出身を隠されていないと伺いまして」
「いえ、私を育てて頂いたのはガニーの街のデメテル神殿のシスター達であることを隠すつもりはありませんよ」
『特にシスターフロラリーは、ね』
『うるさい』
「良いのか?ジェロマンを取り込もうという神殿の企みかもしれないのだぞ」
「その場合にはザールさんが冒険者ギルドとして抑えてくれるのですよね?それに直接には来られずに冒険者ギルド本部に繋ぎを依頼しに行かれたのは、ギルドへの誠意かと」
「まぁあの司祭の感じではそうだろうが、神殿も奥に行くほど魑魅魍魎の棲家だからな」




