魔術師団長ジルベール
ザールの声掛けが遅かったようである。皆が席を立とうとしたところで、ドアがノックされ開かれる。
「少しよろしいですかな」
「はい、どちら様でしょうか」
「ジルベール・ラロシェルと言います」
「え!魔術師団長!どうぞお入りくださいませ」
そう言われれば先ほど俯いていた際に聞こえた声の一人にも思えてくる。
「急に申し訳ありませんな。魔人を撃退されるほど優れた魔法使いのジェロマンさんとお話をさせて頂けたらと思いまして」
「そんなおそれ多い……」
「いえいえ、ご謙遜を。強い火魔法も使えると伝え聞いております。先ほど陛下御前でのお話も聞かれたかと思いますが、我が王国魔術師団は他国に比べて力が乏しく。力のある魔法使いは報酬の良い冒険者になることが多く、魔術師団には老齢や怪我などで冒険者を引退した者が来ることはあるのですが」
「閣下、冒険者ギルドのザールでございます。恐れ入りますが、もしや引き抜きに?」
「ははは、これはこれは、冒険者ギルド幹部のザールさん。もちろん魔術師団に所属して頂けるとありがたいと思いますが、本日はまずのご挨拶を。それに可能であれば出立前に魔術師団の拠点に足を運んで貰えないかのお誘いです。所属どうのの前に我々を知って頂きたいのです。これから共に戦うことになりますので、同じ魔法使い同士、互いを知るべきでは、と」
『私のことに気づいている感じがするわね』
『これは逃げられない流れだよね……』
『でしょうね』
「お誘いありがとうございます。明日改めてご挨拶にお伺いさせていただきます」
「おぉありがとうございます。ではこちらを門でご提示ください」
招待状と書かれた物を手渡された後は早々に部屋を出ていくジルベール。
「あぁいう丁寧な口調で腰が低い人ほど怖いですよね……」
レナルマンの独り言に背筋がブルっとするジェロであった。
「そうだな、早く城から逃げ出すとしよう」
イドの発言に合わせて全員が再び席を立ち、モージャン子爵家に向かう。




