王都への途上2
「騎士団が!」
「あれは確かにモージャン領の騎士団」
街道の進行方向から騎士団が入れ違いになるようにやってくる。いつものように馬車たちを街道の端に寄せて馬車を守るように並ぶジェロたち。
「ユゲット様……」
「私たちの存在に気づかれて何か少しでも通常らしくない応対になっては困ります。私たちは王女達と馬車内に隠れておきましょう」
こそこそとしているユゲットとジャクロエに気づいているのか、アナトマがリリアーヌを連れて商隊の前面に出て待ち構えている。
「おぅ、お前は」
「はい、モージャンを拠点に商いをさせて頂いておりますアナトマでございます。いつもの頼もしい鎧武者姿を、街からも離れたところで拝見でき光栄でございます」
「ふむ、ちょっと用事があったものでな。お前たちも気をつけるようにな」
「は、ありがたきお言葉。皆様もご無事にモージャンにお戻りになられますように」
「あぁ、それでは」
隊長らしき騎士とアナトマが軽い挨拶をして、アナトマから水などの簡単な差し入れを渡した後は自然と別れていく。
「こちらの事情もご存じだったのでしょうか?」
「いえ、どこで情報が洩れるか分からないので、うちが今回のことを承っていることをご存じではないと思います。ただ、もしかしたら、と隊長ぐらいは思われたかもしれませんが、変な対応を見せるとこちらに危険が迫ると認識されての態度であったのかと」
「隊長の方もですが、アナトマさんも流石ですね」
「いえいえ、商人ですからこれぐらいの対応は。私にするとジェロ様の魔法の方がすごいと思いますけれど」
「そんなことは……。では出発しましょうか」
「(そういう風に偉ぶらないところも良いところと思いますよ)」




