王都への途上
一方、帝国兵10騎の追手を撃退した後は、順調に王都へ進んでいるジェロたち。
『なんかあのリリアーヌって商人の娘の懐き方があからさまになって来たわね』
『いや、商人だから普通の人よりも人づきあいの関わり方が深いだけじゃないの?』
『ふーん。でもリスチーヌもそれに対抗して今まで以上にジェロへの接近が激しくない?』
『いや、女性に奥手なことがバレて揶揄われているだけだよ』
『(その辺りは本当に成長しないわね……)』
「モーネ様、いえモネさん、このお肉いかがでしょうか」
「リリーさん、そんなに気を使われなくて良いんですよ。今の私たちは親戚なんですから」
「リリー、無礼は王都についてから謝罪すれば良いのだ。今は自然体で対応することがこの方々の安全に繋がるのだ」
「はい、お父様。モネさん、ヒルちゃん、これ一緒に食べましょうね」
「そうだ。先日の宿屋では危なかったからな」
しつけのなっていない宿屋の従業員がノックも無く部屋に入って来たことがあったのだ。
「その通り。ジャクロエや私もアナトマ商会の使用人なのだから、風呂はあなたたちの後が普通であることに早く慣れて欲しいものだ」
「というユゲット様もまだまだ使用人の口調になっていませんよ」
「ジャクロエも私に“様”をつけているがな」
「あ、それは」
「まぁ皆さま、今日は野営で、他の旅人も一緒ではないので気が緩むのも仕方ありませんが、いつどこで帝国兵の目があるか。気をつけましょうね」
「あぁ、モージャンの騎士団が王都まで行く予定はないはずだから、途中で引き返してくるはず。それ以降は、騙されたと認識して混乱するであろう帝国兵の行動がどうなるかは読めない」
「ユゲット様の仰る通りです。今は帝国兵の目は、王女達が居ると思われている騎士団に向いているはずなので、先日からは安全に来られています。しかし、モージャンの騎士団が王都の許可も無く他領をいつまでも進行することはできないので、もう引き返して来ても不思議でありません」
色々と事情が理解できていそうなユゲット、ジャクロエの発言に改めて気を引き締めて休みにつく商隊であった。




