帝国からの追手
辺りは何もない平原のため隠れることはできない。後ろから騎馬隊が来る前に、馬車を街道に対して少し斜めに重なるように街道の端に移動させて、その前に騎馬のジェロたちが並ぶようにして待ち構える。
かなりの勢いでやってきたのは10騎の集団であった。先般のモージャン騎士団との戦闘があったからか、ムスターデ帝国の鎧姿ではなく、同じ紺色ローブに統一された集団である。
もしも勘違いで通り過ぎてくれればと思って静かにしていたが、そうは問屋が卸さないようである。
「そちらの集団はどこの者たちか?」
不躾な誰何の声に対し、今回も“ジェロ班”の頭脳であるレナルマンが対応する。
「ご覧の通り単なる商隊ですが、どちら様でしょうか?」
「フン!中をあらためさせて貰おうか。若い女性と小さな男の子を探している」
「流石に名乗りもされない盗賊かもわからない人に勝手はさせられません!コンヴィル王国の騎士やこの近くの街の衛兵などであるならばその証を先にお見せください」
「うるさい、そのような者などではない。どかないと切るぞ!」
「そのような無体は盗賊とみなして退治しても我々は罪に問われないというのはおわかりですか?」
「ほう、たかが護衛の冒険者風情が我々に勝てるというのか?」
「逆にたかが盗賊風情が何をおっしゃるのやら!」
「もういい、やれ!」
『帝国ってこんな奴らばかりなのかな』
『もう良いんじゃない、やっちゃって』
先に紺色ローブが切りかかって来たのを見定めてから、馬車たちを守るように≪土壁≫を発動させる。
「うぉ!魔法使いか。しかも発動が速い!」
「何を今さら!」
突如現れた土壁に切りかかるなど戸惑っている追手たちに、ジェロがヴァルと協力して、順次≪氷結≫を発動させて動きを止めていく。
仲間たちの数が減り状況を悟った追手たちが逃げ出そうとするが、改めて≪土壁≫を発動させて逃げ道をふさぐ。




