帝国の追手
街道で追いつかれた帝国の追手、騎兵5人に対してそれぞれ馬ごと≪豪炎≫を発動したジェロ。
鎧を着ているから即死はしていなくても、火が着いた馬が暴れるために落馬はする。兜を被っていない者へは顔に≪火槍≫でとどめをさし、兜を被る者へは≪豪炎≫の重ねがけを行う。
『ジェロ、馬もよね?』
『あぁ』
馬が逃げたら帝国軍の鞍から足取りを追われることになるため、かわいそうだが馬にもとどめをさしておく。
大した時間もかからず、5人の兵士、5頭の軍馬の死体が街道に並ぶ。
「さすがジェロさん、お見事です」
イジドリックやレナルマンが、殺人に気落ちしていると想像されるジェロを慮ってほめる。そこへ騒動を認識して馬車の中に居たままだった王女モーネと第2王子ヒルデリンと騎士アントマーが出てくる。
「帝国兵の撃退は結構ですが、この後はどうするのですか?焦げた兵士たちを放置すると追手に色々と情報を与えてしまいますよね?」
怯えながら王女が詰問してくるが、口調には素が戻っていることに気づいていない。
「きっとこれ以上の騎兵の追撃があると推測すべきでしょう。我々も馬車を捨てるべきと考えます。幸い残りは馬車で半日の行程です。そして、この死体を少し街道より離れたところに放置することで、調査の足止めに期待しましょう」
「わかりました。オスヴィン、その袋に最低限必要なものは移しなさい」
荷馬車から、隠しながら積んでいたオスヴィンとアントマーの鎧を下ろしたと思えば、手元の袋にしまわれていく。明らかに入り切る大きさで無いのに。
『魔法の収納の袋!?』
『そうみたいね。王族だから持っているのでしょ』
『王城から逃げるときに持ち出したのかな。憧れるなぁ』
イドたちが兵士や馬の死骸を街道から少し離れた場所に捨ててくる。焼けていない嵩張らない物は取り分けたようである。
「馬車をわざわざあげるのは勿体無いから、ジェロさん燃やしてください」
街道の端に置いた馬車2台を跡形もないぐらい、地面には燃やした痕跡は残る程度に燃やし切る。




