違和感のある子供
「顔も上げず発言もしなかったので、粗相はしないで済みましたかね」
「本来なら帯刀したまま謁見というのが無いはずですが……」
「確かに、メオンさんや私の短剣ぐらいならまだしも、ジェロさんの刀のような物まで、日頃の通りにという指示も違和感がありますよね」
「結局、今日は何だったのでしょうかね」
「というかジェロさん、そのお子さんはどなたかご存知なのですか?」
大広間から下がった後は、メオン、ニースコンのギルドマスターのアンセルムと3人で、指示された部屋で待っているところである。
ところが、その部屋には3歳ほどの小さな子供がつまらなそうにしていたので、ジェロが孤児院に持参しそびれている無色透明の魔鼠の魔石をいくつか渡して一緒に遊んでいる。
「もちろん私にも分かりませんが、小さな子供が1人というのはかわいそうですし。名前はヒルらしいですよ。ここで待っているように言われたそうで」
「自分自身の子供はまだ居ないのに、孤児院通いを今でもしているからか、上手いものだな」
しばらく子供の相手もしながら待機していると、ノックもなく扉が開いて数人が入って来る。ジェロよりも若そうな女性が1人、同じ歳ほどの騎士風が2人、年齢の高い太った男性である。
「男爵殿、その男性に依頼することにする」
「かしこまりました」
「領主様!」
入室者が会話しているのを見たアンセルムが慌てて跪くので、メオンとジェロも頭を下げて跪く。ジェロは一緒に居た男の子もわきに寄せて頭を下げさせる。
「貴様、何をする!」
若い男性の声で叱責されるが、何に怒っているのかジェロ達には分からない。
「経緯も分からず仕方ないかと」
声からは領主と思われる男性がなだめている感じだけは理解できた。
「ここは私から。皆、面を上げよ。良い、そのまま顔を上げて良い」
先程見えた太った男性がやはり領主であったことをメオンとジェロは認識する。
「こちらにいらっしゃるのは、ラーフェン王国の王女モーネ・ラーフェン殿下と騎士達。そして……」
ジェロの隣の子供を優しく抱き抱えるようにして、モーネの横に立たせて言葉を続ける。
「この方がラーフェン王国の第2王子ヒルデリン・ラーフェン殿下である」




