戴冠式後の使節団
「テルガニ侯爵、私たちはそろそろ国に戻ろうかと」
ユニオール皇国の皇都ナンテールにある、ベルカイム王国の屋敷に呼び出されたジェロ。
そこで、この国の実務上のトップである魔術師団長のプランケットから言われた意外な言葉。
「ですが……」
「はい、ラーフェン王国のルネリエル陛下も帰国の準備をされていると伺っております。ベルカイム王国としてもアンネ女王陛下、ヒルデリン国王陛下には帰国いただいて戦後復興を進めて頂けたらと」
「そうですか」
「おや、テルガニ侯爵としては意外でしたか?」
「いえ、そのようなことは」
「この皇国では武闘派がまだ不穏な動きを、と認識しております。そのような折に、非常に近しい立場であったベルカイム王国の両陛下が逃げ帰ったように受け取られることは望ましくありません」
「はい」
「ですが、前皇帝の葬儀、新皇帝の戴冠式への参列も無事に終えたところですので、国内統治を優先することは対外的に何の問題もございません。その状態で、ベルカイム王国の未来である両陛下には少しでも危険を回避していただくのは臣下のつとめ」
「なるほど」
「テルガニ侯爵も両陛下の安全は第一と思われますよね?」
「え?それはもちろんです!」
「流石はテルガニ侯爵!お分かりいただけましたか!」
「?」
「ベルカイム王国としては、両陛下に帰国いただきますが、その使節団の一員であったテルガニ侯爵が残られることを反対することはございません。皇都には様々な店舗もございますし、便利なダンジョンもございますので」
「!」




