皇都外の騒動
「テルガニ侯爵!これは一体?」
ジェロがラーフェン王国の馬車に到着した頃には、戦闘の騒動が伝わっているようであり、あちこちで混乱が起きている。
ルネリエル国王の馬車には騎士団長のジルバーハインと魔術師団副団長のレーハーゲルが乗っていた。
流石に国家元首の馬車なので、自分たちと違って騎士団の騎馬も数騎が周りにいるようである。
「新皇帝への襲撃と思われます。パレードも終了した後ですので、避難なさってください」
「とは言っても、どこへ?」
「馬車は諦めて、自国の部隊がいる陣地へ向かいましょう!」
ジルバーハインが何か言いたそうな感じであったが声にしなかったのは、その結論を否定できないと思い直したのであろう。
「急ぎましょう!周りも混乱しています!」
「ヒルデリンたちは?」
「大丈夫です!」
リスチーヌも送ったし、ベルカイム王国も女魔人のクリノームとベルフールを護衛としているはずである。
ジェロの即答を信じたルネリエルは、馬車に残るために自分に馬を差し出した騎士に声をかける。
「襲撃者たちも他国の馬車にまでは無体なことはしないだろう。だが、何かあれば命を優先して逃げるように。絶対だぞ」
同様に、おそらくそちらも騎士と思われる御者をしていた男にも声をかけている。
「陛下、行きますぞ!」
ジルバーハインが自身も譲られた馬に乗り、声をかける。
レーハーゲルは自身の騎乗の腕では足手纏いになると留守番を申し出ているが、人質としての価値が高い人物を残すわけにもいかない。ジェロは自身に≪筋力向上≫を発動し、≪飛翔≫で抱え上げる。




