戴冠パレード
花火のような火魔法の件は気になったが、そのようなことを考える時間もないまま、次はパレードである。
来賓である自分たちは新皇帝の後についていくだけと聞いているが、それでも気乗りしない。
「あ、また」
パレードの開始時にも花火のような火魔法が鳴り響き、出発の合図にもなったようである。
「騎士団たちの後に新皇帝、他の王族の後であるし、自分たちはその中でも後の方だから、まだまだだね」
「流石に、先頭が皇都の外に出てから出発とはならないと思いますが」
「この皇都の大きさならね」
冗談でも言うしかない状況の後、いよいよ自分たちの馬車も動き出す。
「ま、俺たちのことに興味のある人たちもいないだろうし、気楽に」
しかし前回と違い、今回は窓を開けて手を振る必要があるので、心を閉ざして機械的な動きと作り笑顔を延々と続けるジェロ。
心の中ではいつまで?まだ?と思いながら、隣でヴァルやリスチーヌの様になる姿を見ると弱音も吐くことができない。
「ジェロ様、もうすぐ終わりも見えましたよ」
小声でリスチーヌが声をかけてくれる。彼女の方向からは城門か城壁が見えたのであろう。
「ありがとう」
道路脇の観衆に顔を向けて手を振っているので、軽い返事だけ行いつつ、ようやくかと気が緩みかける。
そのようなときに、ドン!という大きな音が聞こえてくる。先ほどまでの花火の火魔法の音とは感じが違う。
しかし観衆は慌てる感じがないので、自分たちの見えないところで別のイベント用の催しが行われているのかもしれない。
そのように思いながら、ようやく城門を通って皇都の外に出たところで、そうではなかったことを思い知る。




