戴冠本番3
「新皇帝の登場です」
今度は広場に集まった皇国民たちに聞こえるようにもっと広範囲に風魔法で案内の声が流れているようである。
ジェロたちは広場とは違う皇城側でありそれほど声は聞こえなかったが、逆にジャムス新皇帝が建物からテラスの端に向かって歩く姿が良く見える。
そしてテラスの端にたどり着いたジャムスの姿が地上の国民たちに見えたところで、大きな歓声が湧き上がる。
ジャムスは右手をあげてしばらくそれに応えるが、静かにその右手を下ろしたところで、歓声も静かになる。
「ユニオール皇国の皆さん、そして参列いただいた各国の皆さん。この度、無事に戴冠をすることができたジャムス・ユニオールです」
いったんここで言葉を切ったジャムス。それに合わせて、再び歓声と盛大な拍手が湧き上がる。
その後、ジャムスの右手の上げ下げで再び静かになったところで、彼の演説が続く。
偉大な先帝のあとを継ぎ責任重大であるが、この大国の平和を守っていく、皆もしっかりついてきて欲しいという内容であった。
そしてその後に破裂音と共に空に上がったのが、花火のような火魔法であった。昼間なのでそれほど色合いが目立つものではなかった。
「ジェロ様、これって」
「シー」
もしかすると自分のを真似された可能性もあるが、元々この大国では普通だったかもしれない。特許の概念はないのを知っているこの世界では違法ではないが、もし真似という単語が誰かの耳に入ると体面の問題が出てくる。
すぐにリスチーヌも認識したようでその後は黙っている。




