皇帝戴冠式2
ジェロも、武闘派であることを隠すどころかアピールしていた、ユニオール皇国騎士団のアルノワ伯爵がいるはずのないこの場所にいると言われると不安になるが、そのことを考えても仕方がないので、流れに従って式典会場に移動する。
再び案内の声がかかる。
「そのまま係のものの誘導に従ってお進みください」
人が多い場所でよく響く声と思っていたが、スピーカーもない世界であり、自分も多用した風魔法による拡散であると気づく。
過去に参加したラーフェン王国、ベルカイム王国、コンヴィル王国の3カ国の戴冠式では気づいていなかったので、自分以外がそのようなことをしていた記憶がない。
『流石は大国であるユニオール皇国、これくらいを普通にやる魔法使いか、魔導具があるということなんだ』
案内に従い、国王たちが出席するラーフェン王国とベルカイム王国とは早々に離れ、さらに王族が出席であるルグミーヌ王国のメンヒルト王女とも離れていく。
着いたところは、葬儀のときと同様に国家元首や王族ではない国家代表のものの集まりのところであった。葬儀のときに挨拶をした人、していない人を含めて見覚えがある。
周りも静かであるので、互いに会釈だけで挨拶をして会場の中心部をのぞき込む。
この会場は、前世でいうと映画館や舞台会場のような一方向に向けて観客がいる施設ではなく、スポーツ体育館のように一段下に対して2階の観客席が階段状になって見下ろす施設であった。着席する椅子はなく、全員が立って中心部を見ている。
葬儀会場は、先帝の棺や花の方向を皆が見る、前世での芸能人などの葬儀と同じように一方向に向けてみる形で違和感がなかった。
ここでは、皇帝の戴冠式という偉い人を見下ろすことになるのは許されるのだ、とつい思ってしまう。
前世では戴冠式をイメージできる経験はなかったし、最近の3カ国の戴冠式でも同じ高さから見るか見上げる形状だったので、違和感を感じるのであった。




