皇帝戴冠式の直前3
「中の方は代表しか入れないとの話です。お二人のこと、何卒お頼みします」
ベルカイムのプランケット魔術師団長がジェロに話しかけてくる。
「同じく、どうぞよろしくお願いします」
ラーフェン王国のレーハーゲル魔術師団副団長が話しかけてきて、その横でジルバーハイン騎士団長も頭を下げてくる。
確かに彼らにすると自国の国王、女王を単独で送り込んで自分たちは離れたところで待機することになる。少し離れたとしても近くにいるはずの、味方の戦力に期待するのは当然だとは理解する。
「ジェロ様、うちもぜひ」
その中で申し訳なさそうにコンスタンが行ってくる。自分の妻であるルグミーヌ王国のメンヒルト王女のことも忘れないで、というのであろう。
「もちろん。でも、何も起こらないと思うけれど。流石に各国の代表しか集まらないところで何かを起こすと、武闘派も各国を敵にすることになるのだから」
「でも、ムスターデ帝国以外でユニオール皇国を相手に戦争できる国なんてありませんから」
「その帝国の同盟国に変わられてしまうと皇国も辛い立場になるよね」
「自分の力を過信した人たちでないことを祈ります……」
体は大きく力があるコンスタンであるが心は優しく心配症であることを、妻のことになると余計に発揮してきた感じがする。
苦笑いしてしまうが、次に会話にやって来たユニオール皇国のドゥケ侯爵には真顔で向き合う。
「西方の4カ国の仲がよろしいのは本当ですね。しかもテルガニ侯爵を中心として、というのが拝見されます」
「仲が良いのは確かと思いますが、私はそのうちの3カ国に属するというだけですので」
「ご謙遜を。それより先日は当時副官だったアルノワが失礼な態度を申し訳ありませんでした。あの場で申し上げると彼も面倒ですので」
「とんでもないことです」




