皇帝戴冠式の直前
そしていよいよ、ジャムス皇太子がユニオール皇国の皇帝となる戴冠式の日となる。
その前日までは緊張感だけは街からも伝わって来たが、先日の葬儀と違いお祝い事として屋台などの店も増えているので住民たちは楽しい側の盛り上がりととらえているようである。
「ジェロ様、そのような嫌な顔をなさらず」
「いや、こういう礼服って息苦しくて慣れないなぁと」
「もう何回目ですか。諦めていただいて、早く馬車に向かいましょう」
そういうリスチーヌは侯爵夫人としてのドレスを着慣れたのか、特に不安がる様子はない。ヴァルは以前からドレスを着こなしており、様になった姿で貴婦人らしい。
ため息をつきながら、背筋を伸ばして部屋を出て、この屋敷の人たちに見送られながら馬車に乗り込む。
「まず皇城で、各国の代表や皇国内も含めた人たちの前で戴冠の儀式。それが終わった後に、テラスから国民に挨拶。その後に皇都内をパレード。最近に何度も経験していることと変わりはないはずだよね」
「確かに、ラーフェン王国、ベルカイム王国、コンヴィル王国と連続だった後にさらにユニオール皇国ですからね。そんなに続くことも普通はないでしょうけれど、それよりもその4カ国の戴冠式全てに列席されるジェロ様の立場もすごいですよね」
「そうだよね、おかしいよね。孤児院育ちで単なる冒険者ギルドの一職員だったのに」
「ま、実力ある人には、世の中が楽をさせないということですね」
リスチーヌが笑いながら言うので、冗談なのか分からず苦笑いするしかない。
ジェロは、コンヴィル王国の外交官として一緒に来ているムラン伯爵、かるカイム子爵の馬車だけでなく、同じ屋敷に滞在していたルグミーヌ王国のメンヒルト王女たちの馬車と一緒に皇城に入る。




