不穏な空気3
「なんとなく街の警備の人が増えた気がするわね」
「あれ、警備なのかな。騎兵隊や歩兵隊みたいな軍っぽいけれど」
皇都ナンテールの中を歩いていた仲間たちの感覚である。
マドロール配下の裏部隊からの報告は皆に伝えてあり、警戒だけはするように指示しているので、余計にそういうところに目がいくようになっているのであろう。
「日常に比べて、私たちみたいに外国からの来訪者も多いから、衛兵だけでなく軍の方も巡回に駆り出されている話は聞いているけれど」
「その軍には、武闘派がたくさんいるだろうから、誰から誰を守るように気をつけるのかよく分からなくなるわね」
「いやいや、武闘派も一般の自国民を傷つけたいわけではないだろうから、衛兵のような仕事はちゃんとするだろう?」
「ところで、ジェロ様は本当に皇国貴族たちと交流されなくて良いのでしょうか?」
「ん?多分……」
「ジェロがあの外交官たちに丸投げしているのをリスチーヌは心配しているのよ」
「ヴァル、わかっているよ。そう、ムラン伯爵とカルカイム子爵が代わりに対応してくれているから良いんだよ。下手な言質を取られることもあり得るし、外交の素人が同席するよりあの2人も安心だろうから」
「ま、それはあり得ると思いますが」
「ジェロは、コンヴィル王国、ラーフェン王国、ベルカイム王国の3つの貴族たちと最低限の交流をやるだけでいっぱいで、それ以上は、ね」
リスチーヌとヴァルの2人の妻から可哀想な目で見られていると感じてしまうジェロ。
「ちゃんと式典の場では、必要な人とは挨拶するから、今の間は許して」
そう言いながら現実逃避として、趣味である魔法カードの店や、豊富な資金で仲間たちのために調達するよう魔導具の店にその2人と出かけていく。
2人も、ジェロがそういうことをいまだに苦手としているのは理解しているし、この後に起きると思われる騒動前の、精神的な休息の時と割り切っている。




