皇都での拠点2
「リスチーヌ、これはどういう……」
久しぶりの皇都ナンテールであるが、そこで見知らぬ立派な屋敷の前で立ち尽くすジェロ。
「マドロールに、拠点の調達を任されましたよね?」
「あぁ。裏部隊のメンバの安全や動きやすさのために、俺たちが前に住んでいたところ以外に、と言ったつもりだったんだけど」
「まぁ、良いじゃない。おかげで使節団の皆が恥をかかなくて済むんだから」
「まさか、リスチーヌだけでなくヴァルも知っていたのか?」
「いいえ、細かくまでは。でも想像はしていたわ。ジェロは自分の家臣の優秀さを侮りすぎよ」
おそらく元々は上級貴族の拠点だったと思われる大きな屋敷である。
ドラゴンたちもここに連れて来てもいいと思えるほどの庭の広さだが、流石に皇都内で混乱を巻き起こすと思われるので、実行はできない。
「これならば確かに、コンヴィル王国の外交メンバ、ルグミーヌ王国の幹部の皆さんはお招きできるな……」
招待する前に、と屋敷に入ろうとすると出迎えの人員までいる。
「侯爵閣下、お帰りなさいませ」
聞くと、10人の執事や侍女などがこの屋敷のために雇用されたとのこと。
「確かにドラゴンの素材を売却していればそれくらいのことはできるかもしれないけれど……」
「ちなみに、裏部隊とか関わりのない人たちらしいわよ」
「やっぱり、ヴァルも知っていたんじゃないか」
「ま、ハポリエルを使って皇都とドラゴン素材や情報のやり取りなどしているからね」
「他にも内緒にしていることがあるんじゃないのか?」
「組織の長が全部を知ろうとするなんて無理なのよ。ちゃんと任せれば良いのよ」
「……」
その話とは微妙に違う気がするが、妻たちに言葉では勝てそうにないので我慢する。




