ワコローズの通過3
「ほら、気にしすぎだったんだよ。大丈夫」
ワコローズの街でのパレードを終え、挨拶のために代官館に到着したところでジェロがヘルツォークに声をかける。
「はぁ」
しかし、その館でヘルツォークが街の運営を行っていたため、ここでは顔を知られていたようである。
「もしかして、ノルトマン様では?」
「あ、あの折には申し訳ありませんでした」
職員に気づかれたようで、慌ててヘルツォークは頭を下げる。ムスターデ帝国軍として街を支配していたことを後ろめたく思っているからの反応である。
「何をおっしゃいますか!最初に王国騎士団が裏切って街を支配していた頃は帝国軍も騎士団も横暴でしたが、それを止めていただいたのはノルトマン様ではありませんか。それにこの街が解放される際にも、それまでの各書類や金品はきちんと整理して鍵をかけられて引き渡しをされたおかげで、この街は混乱することなく今に至るのですよ」
「いえ、それは当たり前の……」
「またそのようなご謙遜を。それよりどうしてこちらに?その騎士団のような装備ということは、どちらかにお仕えを?」
「はい、こちらテルガニ侯爵のところで」
「え!?あ、大変失礼いたしました。テルガニ侯爵閣下。ようこそワコローズの街へ。それこそこの街を解放して頂いた方に何という失礼を」
ジェロは鎧姿でもなく上級貴族らしい服装のつもりであったが、元王族のノルトマンの横にいると影に隠れてしまったのかもしれない。苦笑いするしかない。
「いえ、大丈夫です。それよりも2カ国の使節団の受け入れ、ご迷惑をおかけしますが、今夜だけどうぞよろしくお願いします」
「は、もちろんです。必要以上の費用もいただいておりますし、街をあげて歓迎させていただきます」
色々な事情も認識しており、それなりに上級の職員であったのだと思われるが、慌てて去っていく姿はやらかしてしまった子供のようであった。




