ワコローズの通過
「あれがベルカイム王国のワコローズの街ですな。テルガニ侯爵がムスターデ帝国軍を追い出した最後の街」
「確かに。そこでベルカイム王国の解放が完了したのですよね」
ムランとカルカイムの発言で改めて認識する。
ユニオール皇国への使節団がワコローズの街に入る手続きをしている際に、ヘルツォーク・ノルトマンがそっとジェロに近づいてくる。
「ジェロマン様、我々は街の外で野営するのでもよろしいでしょうか?」
「あ、なるほど。一緒に街の中で泊まるのは、辛いか?」
「ご命令とあれば、もちろん街の中にも入りますが」
ヘルツォーク達は元々がムスターデ帝国軍。そしてこのワコローズの街を占拠・支配していた立場であり、テルガニ侯爵家の騎士団として他国の使節団に混ざっている姿を見る住民の感情を気にしての発言である。
テルガニ侯爵領内では気にする必要がなかったことであるが、ここでは、ということになる。
もちろん、護衛の意味ではヘルツォークたち30騎がいなくても、他に十分な戦力がいるので問題はない。
しかし、彼らが帝国軍であったことは変えられない事実であり、いつまでも逃げるわけにいかない。
「よし、一緒に街に入ろう」
「え?ご迷惑をおかけすることには」
「大丈夫だよ。これを機会に、テルガニ家の一員になっていることを知って貰おう」
無理を言って馬一頭を手配して貰い、自分の貴族用馬車ではなくその馬に騎乗するジェロ。ヘルツォーク達の近くに並んでワコローズの街に入るのであった。




