皇国への使節団出発2
大人数になった皇国への使節団の規模を見てため息を吐きながら、馬車に座っているジェロ。
「あら、空を飛んで行きたかったという顔ね」
「ヴァルだってそうだろう?」
「それは、あなたと結婚してからは諦めていることよ。その間は自由を我慢するわ」
「う。それは悪かった」
「あらあら。冗談よ。これはこれで楽しめば良いのよ」
「お二人とも、私も同席していることを忘れないでくださいね」
「リスチーヌ。もちろん分かっているよ」
「でしたら良いのですが、というのはおいておいて。ジェロ様。まだ出発したところですよ。街道も整備済みですし、馬車も含めたみなさんの手際が良いからそれなりの速度で進めてはいますが」
昔の大名行列の大名ってこんな気分だったのだろうか、とつまらないことを考えてしまうジェロ。
「あ、まさか一般の人が前を通ったら無礼討ちなんて話にはならないよね」
「え?何をおっしゃっているんですか?あ、でも、この団体が通行中に横切るのは大変ですね」
「この街道を使ってくれている人たちに迷惑にならないように、もし見かけたらその人たちに配慮するようにみんなに言っておかないと」
「ジェロ様、そのお気遣いは領地内、テルベルクの向こうまでにしないと、他国の王族からは嫌がられますよ」
「あ、そうなるとメンヒルト様に失礼か」
「ま、侯爵領内ならば、侯爵家の家中になられたメンヒルト様もジェロ様のご意向を優先されると思いますよ。領民や領内を通行される商人たちに配慮されるということを」
「それこそリブルドーでラーフェン王国やベルカイム王国の使節団と合流したら、街道の人たちには注意が要るね……」
「そんなことまで気を遣われるのはジェロ様だけですよ。良い面ですけれど」




