ユニオール皇国の資金対策
「で、3点目は?」
「はい。ユニオール皇国の有力商人たちが、何かあったときのために資産の避難場所を探します。皇国の西側で考えますと、ラーフェン王国やベルカイム王国はムスターデ帝国に占拠・支配された事例も最近にあるように不安が残ります」
「それって」
「はい。ここテルヴァルデが適当な避難場所と考える可能性があります。コンヴィル王国でも王都ミューコンは遠いですし、ここテルヴァルデは山脈の街道が開通したことで、リブルドーの街を経由するとそれなりに皇国に近いです。また、帝国に対して対抗できる戦力もある場所なので戦火に巻き込まれる可能性が大変低いと考えられます」
「商人本人やその家族が避難してくるということ?」
イドも理解しようと確認をする。
「それもありえますが、まずは資金の避難先、投資先です。おそらく長い皇国の歴史においては商人から軍資金を徴収する過去もあったでしょうから」
「それは可哀想な歴史だけど、ここに商人が来たり、投資先になったりするのはテルヴァルデにとって良いことではないの?」
「一面ではそういうこともありますが、この街のあちこちがその資本で支配されるとなると、非常に街の運営がやりにくくなります。他国の資本が発言力を持つことになりますので」
「何かよく分からないけれど、どうしたら良いの?」
そこまでになるとリスチーヌも懸念である意味が分からない。
「ジェロ様、テルガニ侯爵家の資本力を使って、この街をもっと大きく開拓します。その上で、他人が購入できる敷地の割合を小さくし、あくまでもこの街の支配権は侯爵家が主体であることをはっきりさせておきます」
封建社会の領地の運営の話なのに、株式会社の運営や、円安で土地を買い漁られる前世日本みたいだと思ってしまうジェロ。




