コンスタンの気持ち
「……メンヒルト王女のお言葉自体は理解いたしました。ですが」
ジェロは言葉を切ってコンスタンの顔を見る。
今までもメンヒルト王女があからさまに言い寄っていたのに対して、コンスタンの態度は微妙であった。
ジェロにすると、本人が望んでもいないのに政略結婚のようなことを仲間に押し付けたくない。
メンヒルトが自分の隣に移動して来たときには、豆鉄砲を食らった鳩のようであったコンスタンの表情。
王女の解説を聞いている間に真剣な顔に変わっていた。
「コンスタン、自分の正直な気持ちを教えて欲しい」
「……はい。吸血鬼からお救いした当初、吸血鬼を倒したのはジェロ様であったのに、最初に部屋を開けた私に対する王女様の勘違い。戸惑いしかありませんでした。単なる冒険者で、読み書きも満足でなかった自分にすると、会話すらあり得ない方ですので」
「「「……」」」
口数の少ないコンスタンが、考えながら誠実に言葉を紡いでいるので、周りは静かに続きを待つ。
「ですが、王女様は勘違いであったことを認知された後でも、私に対してお話を続けてくださり。遠く離れていっときの熱も下がったと思われた後に再会しても、私のことを構ってくださるメンヒルト様。女性に縁の無いような一生だったこんな自分に対して、あの吸血鬼が選ぶほどの美人がいつも声をかけてくださるのです。心が動かないわけはありません」
「「「……」」」
「メンヒルト様」
ジェロの方ではなくメンヒルトの方に向き直したコンスタン。
「こんな私でよければ、これから一緒に暮らしていただけますか?結婚して貰えますか?」
それなりに覚悟を決めて来たのだと思うメンヒルト。ようやく届いたと思える言葉に、何も言えず涙をこぼしながら頷き返す。




