思わぬ来訪者
思わぬところから、各国の王都に拠点を用意する話になってしまったが、取り急ぎは皇都ナンテールの拠点の鍵をマドロールに預けることで話を終わる。
「あら、もちろん良いお屋敷があった方が良いですわね」
夜、モーネにその話をしても、やはり各国の王都に拠点、それもしっかりした屋敷を構えることを薦められる。
屋敷となると無人にできないので雇用の話も考える必要があり、簡単に判断できない。
「マドロール。とりあえず屋敷は難しい。でも、ラーフェンとベルカイムのそれぞれの王都に拠点があった方が良いのはわかる。それぞれにもマドロールの配下を送るときに、一般家庭より少し大きいくらいの拠点の調達もしておいてくれるかな」
「そうですよね。まずはそのくらいで。もし屋敷を調達しても、裏の部隊には別の拠点もあった方が便利ですし」
侯爵家として雇用する人が増えていくのは仕方ないと割り切るように、自分に言い聞かせるジェロ。
「顔を知らない人が増えていくのも違和感があるんだよなぁ」
「仕方ないわよ。慣れていきなさいね」
いまだにヴァルにだけ甘えるような言葉を吐いてしまうことに気づいていないジェロ。
できることはやったと思い、しばらくは少し落ち着いたつもりで過ごしているジェロ。
そこに思わぬ来訪者の知らせが来る。
「いやいや、ルグミーヌ王国のメンヒルト王女がここに来られるなんて偽物だろう!ちゃんと確認しないと」
「いえ、前触れもなかったので私も疑いましたが、何度も拝見したお顔そのものです」
知らせをもたらした兵士の言葉に驚きながら、テルヴァルデでも外来用のエリアに≪飛翔≫で向かうと、まさにあのメンヒルト王女であった。




