魔人達の到着
新婚旅行を兼ねた結婚報告の旅から帰ってきたジェロたち。
拠点であるテルヴァルデ、テルシュタット、テルベルク、そして魔人村の開拓状況を確認したあとは、書類仕事などに精を出す。
「これ、俺がいない間にはイドやマドロールが片付けてくれていたんだよね?じゃあ、俺がしなくても」
「ジェロ様、我々がやっていたのは領主代行です。領主様が戻られたのであれば、理由がない限りご本人でやっていただくべきかと」
「う……」
まだまだ開拓を進めるにあたって、大きなお金の支出が発生することは多い。その決裁行為は役職ごとに上限金額を決めて委任しているのだが、大きな金額の場合にはどうしてもジェロが判断というか、実質的には追認であっても目を通しておくべき項目が多い。
街の区割りについては最初に決めた方針に従って進められているので、しばらくは見直し不要だと思っている。
しかし、衛兵の数も増やすことになり雇用を進めていくと、ある程度の役職以上に対する任命などは本人達のやる気のためにも領主自ら行った方が良いことは理解できる。
事務職員についても同様である。
「ほら、ジェロ兄。みんなが待っているから、しっかりして」
孤児院の後輩で妹みたいに思っていたエマニック(エム)にも叱られる。
「これからテルヴァルデはますます人口も増えていく。その中でも君たち職員の働きによって、彼らの生活が豊かになるか不自由になるかも決まっていく。ぜひ一緒に良い街を作り上げていくのに協力して欲しい」
新しく役職に就く職員に対し、ジェロは慣れないながらに領主らしい言葉を考えて話を行う。
『ま、そのうち慣れるわよ。頑張って』
頑張ったつもりなのに、ヴァルから慰めのような言葉を言われ少し落ち込むジェロ。
「ジェロ様、アバドンという口の悪い男が面会を求めてきておりますが」
魔人達の引っ越しに送ったはずのアバドンである。




