テルベルクの様子2
「ジェロ様がお戻りになられましたし」
逃げていったトイレから戻ったジェロを捕まえて、今度は真面目な話を始めるレナルマン。
「ベルカイム王国とコンヴィル王国を結ぶ新たな街道ができたということで、さまざまな者達がこの街道を通っております。当然に商人のような者が多いのですが、稼ぐ場所を求めているのか冒険者風の者もそれなりに。そしてきっとその中には各国の間者、スパイも紛れ込んでいると思います」
「テルヴァルデにも結構スパイは来たみたいだけど、立ち入り禁止場所に入ったやつはマドロールが上手く処理してくれていたよ」
「なるほど。ここにはテルヴァルデのように住民だけのエリアは作っていないですし、見られて困るところはありませんからね」
「森を切り拓いて街になるようなものを作っていること自体が、他人にとったら脅威でしょうけれど、それを見ても真似できる人なんて他にいないでしょうからね」
「あ、このテルベルクの長に、と挨拶を求められた中にユニオール皇国ゆかりの方が何人か」
「え?それはまた……」
「ですよね。わざわざ大国から?と思ったのですが、商人ならば変化があるところに商機があると感じたのかと」
「本当に商人だけなのかしら……」
「リスチーヌが気にしているのは?」
「ほら、文官系の皇太子と武官系の第3皇子の関係が、という話があったじゃないですか」
「ワイバーン討伐のときね。でも、武官の顔を潰さないように皇太子殿下がうまく立ち回られたので火種にならなかったよね」
「それはそうなんですが、ムスターデ帝国軍を、ラーフェン王国やベルカイム王国から無事に追い出したので、国内側に目が向いてしまう人が増えるかと」
『色々なことに気がつくようになったわね、本当に』
『そうだよね』
『侯爵閣下の妻の自覚かしら』
『からかうなよ』




