魔人村の進捗
ジェロは前回の一時帰国の際には確認できていなかった魔人の村の開拓のことに取り掛かる。
これに関しては、ベルカイム側のテルベルク、ラーフェン側のテルシュタットのそれぞれとは違い、レナルマン、エヴラウルとジョジョゼのように普通の仲間に任せられるものではないからである。
「ヴァル、一緒に行こうか」
「あら、モーネのことは置いておいて良いのかしら」
「からかうなよ。俺が昼間もずっと隣にいるより、メイドたちがお世話してくれる方が安心だろう。それより、早く教えてくれれば良かったのに」
「そういうことは本人の口から伝えたいものよ」
この先、そのヴァルやリスチーヌが妊娠することがあれば早く気づける男になりたいとこっそり誓うジェロだが、それすらもヴァルに見透かされている感じである。
結局、ヴァルと2人で魔人の開拓村に≪飛翔≫で向かう。
「おぉ、こんなに出来上がったのか!」
「領主殿か」
大工職人だと言っていた魔人アリオクが出迎えてくれる。それ以外にも何人か見知らぬ魔人が、すでに出来上がっている家から出てくる。
「おいみんな、この人間がこの村のあるこの辺りの領主殿だ。横にいる女悪魔と結婚して生まれる子孫のためにも魔人の村を守るっていう変わり者だ」
「お、おい」
前回、勝負に負けていうことを聞くようになったはずの魔人アバドンが、他の魔人たちに微妙に悪意のある言い方で自分を紹介する。
気になるのが、出て来たのは成人男性らしき者たちばかりであることである。
「おい、移住はまだまだなのか?」
「確かにまだ途中だが、もうそれほど遠い先ではないだろう。今、ここにいるのは職人的な男たちが先に来ただけだ」




