モーネ懐妊2
『ヴァル、教えてくれよ』
ジェロは味方がいないと思えたので、念話でヴァルに助けを求める。
『私からは言えないわよ。本人がそのうち話してくれるわよ』
結局は誰も教えてくれないまま、帰って来たのならば、と各種書類の仕事をイドとマドロールに押し付けられる。
それらを確認していると、確かに先日一時的に戻ったときにもある程度わかっていたのだが、他国からの密偵、スパイらしい者が増えたらしいことが書かれている。
「皆、伝えておくことがあるんだ」
王都ミューコンの戴冠式パレードで、帝国の者と思われるものが火炎瓶を投げ込むテロ行為があったこと、そしてその犯人を調べようとした奴隷商人の仲間と家族に起きたことを共有する。
「ひどい話ですね……」
「いくら国家間の駆け引きだと言っても、人の命をなんだと思っているんだ」
仲間達もムスターデ帝国と思われる行動に対して強い憤りを示す。
「帝国に一番恨まれているのは俺だと思うのだよね。だから、皆もこのテルヴァルデなども気をつけないと」
「侯爵軍と衛兵の配分も見直しましょうか」
「奴隷契約までは行かなくても、衛兵達には≪簡易契約≫を行いましょうか。もちろん、本人達の同意を取りながら、ですが」
色々な改善策が提示されてくる。
「その書類の中にもありましたが、一応ご報告しておきますと、住民以外が入れない区画に忍び込もうとした者たちを捉えました。捉えるときに武器で応戦して来たものは犯罪奴隷に、単なるコソ泥程度のものは借金奴隷にしました」
「そいつらは?」
「はい、それぞれ奴隷契約で背後を話させましたが、借金奴隷の方は本当にコソ泥のような気配でした。見張りをつけて開拓などの力仕事をさせております」
「じゃあ、犯罪奴隷の方は?」
「はい……」




