テロリストの正体3
騎士団達や王国幹部の話を聞いていないジェロは、何か余計な仕事が増えないうちにとテルヴァルデに戻る準備を進めている。
「では、またしばらくお会いすることはできないですね」
「そうなりますね」
王都を去るにあたり、魔術師団長のラロシェルに挨拶に来たジェロ。
そこではじめて、今回のテロリストの話を聞く。
「そうですか、帝国の差金と……」
「はい、そこまで手際が良いことから逆に想像されることも狙っての作戦であったのかと。ムスターデ帝国から一番にらまれているのはテルガニ侯爵と思われますので、領地に戻られてからもお気をつけくださいね」
そう考えると、妻や仲間だけでなく領民を含めて守りたい人達が増えてきたことに気づく。
少し前までは、冒険者ギルドの一職員であり先輩達とたまにお酒を飲みに行くくらいの人生であったのに、と思ってしまう。
「帝国としても、間にラーフェン王国があるのだから、戦争的なことをテルガニ侯爵領に仕掛けることはできないよな。だからこそ、領地での嫌がらせのような防ぐことが難しいことは増えるかもしれないぞ。衛兵の充実などを考えるのだな」
王都の冒険者ギルド本部の幹部であるザール・タンプからの助言である。
彼にも王都を出るにあたっての挨拶で訪問し、状況を伝えたのであった。
「冒険者ギルド職員が言うのも、と思うが、冒険者は誰でもなれるから、巡回業務などはちゃんと雇用した信頼できる衛兵に任せるなど使い分けをするのだぞ」
立場もあるのに親身になった発言に感謝しつつ、王都に別れを告げる。
ドラゴン3体、ワイバーン1体との一緒の移動であり、途中で街や村によることは難しいが、それだけ短時間での移動になる。




