テロリストの正体
「早く彼の家へ!家族を人質にされて脅されていたとしか思えません」
縛られたままながら、自身と仲が良かった奴隷商人の家を騎士団員達に伝える。
その事情も想像された団員達は、すぐに騎馬でその商人宅に駆けつけるが、家族と思われる女性や子供達がある部屋で縛られたまま事切れた状況であった。
一部の団員はその商人宅に残りながら、一部は衛兵の詰め所に、一部だけが王城に戻ってくる。
そして騎士団長のニーシヨンへ報告するのと合わせて、生き残った奴隷商人にもその状況を伝える。
「どこまで後手後手に……」
ニーシヨンは逆に冷静な怒りに変わりつつ、自身の指揮下になる衛兵団への指示方法に頭を切り替える。
状況を伝えられた奴隷商人の方は、その結果を想像していたようである。
「やはり……こうなると、王城に出入りを認められた奴隷商人の自分の仲間であったことが、彼の家族に……」
本人だけでなく、騎士団員達もその旨を気づいたようである。
「つまり、奴隷をテロリストにしたのだが、万が一にでも捕まれば尻尾を出さないようにするために、王城への出入りの奴隷商人のお前の近辺を探っていたと言うのか。複数の奴隷商人が必要ということまで把握しているとは、どれだけ手強い……」
「そこまで奴隷契約のことに熟知している相手であり、さらにそれだけの手配ができる手練れを用意できる組織ということですよね」
「その割に、テロそのものは脅し程度でしかなかったということは……」
「逆にここまで読んだ上での警告ということか」
奴隷商人の話も含めて、再び報告を聞いたニーシヨン達。
「商人宅では手がかりを期待できそうにないな……」
そのつぶやきの通り、商人宅の周りの聞き込み結果では前日まで家族も普通に外出していたとのことであり、諸々の行動が実行されたのはたった一晩のことであることがわかる。




