視線
私は会社員だ。デスクワークでパソコンとにらめっこしていることがほとんどだ。
そんな私の秘かな楽しみといえば、隣の課の坂元さん。私のデスクから通路を挟んではす向かいに座っている。彼を見ることが心の癒しだ。とても爽やかな好青年。とはいえ少し照れ屋なところが可愛い。
そんな私はパソコンを見ているふりをして坂元さんをチラ見する。照れながら隣の課の女の子と話している。そんな姿を見ると、胸がチリチリする。
私も同じ課だったら……。何度そう思ったことか。
でも私はただ、坂元さんを見ているだけで嬉しい。これで私は幸せなんだわ。
そして私がふと視線を上げた時だった。坂元さんと目が合った。
ガシャン
「木村さん、どうしたの?」
「あ、あの、文房具を落としちゃって……」
坂元さんが私を見てた……?ううん、偶然だわ。
私はそっと視線を上げた。そこには坂元さんの姿はなく、奥の会議コーナーで話し込んでいる。
やっぱり偶然ね。私ったら自意識過剰だわ。なんだか顔が火照ってきたみたい。トイレで落ち着いて来よう。
私がトイレから戻ると、坂元さんは席に戻っていた。私は素知らぬ顔で自分のデスクへと戻った。そしてパソコンを見たとき、前方から視線を感じた。
坂元さん……!
私たちの視線の先にはお互いがいる。絡み合う視線。
胸の奥が熱い……。これは何?
何故坂元さんは私を?
目をそらさなくちゃ!ああ、でも坂元さんの瞳に吸い込まれていく……。




