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愛してる
「愛してる」
そう言われたのはいつだったか。あぁ、五年前のあの日だ。
その日、彼はうちにやって来て、ごはんを一緒に食べた。ベランダにタバコを吸いに行く時もキスを求めた。わたしがキスをしてあげると、彼は嬉しそうにタバコを吸いに行った。
そして、テレビを見ながら何気ない話をしていた。そんな時、彼は突然わたしに語りかけた。
「一緒に暮らさないか」
わたしは驚いて、テレビから彼へと視線を移す。彼はいつものへらへら顔でなく、真剣な顔つきだ。わたしが答えないでいると、彼は言った。
「愛してる」
本当に?本当にわたしを?
「結婚してくれるの?」
「それはまだ……」
わたしは腹が立ち、彼を追い返してしまった。それが最後の日だとも知らずに。
彼は二度と来なかった。




