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恋愛模様  作者: 奈月ねこ
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集団合コン

 私には恋人がいない。元カレと別れてから一年が経つ。そんな私を心配した友人が合コンへ行こうと言い出した。会費を払って、多くの男女がいる所へ行くらしい。

 私はそこまでして彼氏が欲しいとは思っていないので友人に断りの言葉を口にしたが、友人はもう申し込んでしまったという。行かなければ会費が無駄になってしまう。もったいない!私のそんな性格を友人は把握していたのだ。仕方なく顔だけ出すことになった。

 当日受付へ行って会場へ入ると、中々に広かった。それもそのはず。男女50名ずつ、合計100名の大人数だ。こんなに人が集まるとは……!みんな彼氏彼女が欲しいのだろうか。

 こんなに大勢いるのだから、私一人が輪の中から抜けても大丈夫だろう。私はそう楽観視していた。

 そして、集団お見合いのようなイベントが始まった。友人は早くも目当ての男性を見つけたらしく、突進していってしまった。私は仕方なくなるべく人目につかないように壁際にいた。しかし何故か私を見つけて話しかけてくる男性たちがいる。


 どうしよう……!


 そんなときだった。


「こんな所にいたのか、沙弥、あっちへ行くぞ」


 いきなり現れた男性は私の腕を掴むと、男性たちの輪の中から引っ張り出してくれた。しかし、私は知らない人だ。どこへ連れていかれるかも不安に思い、彼に話しかけた。


「あ、あの、どこへ行くんですか?それにどうして私の名前を……」

「名札を着けてるだろう?」


 人の少ない所へ来ると彼は腕を離した。

 名札!そうこのイベント参加者には名札を着けることになっている。それをこの男性は一瞬で見たというのか。しかしあの輪から抜け出せてほっとした。


「あの、ありがとうございました」


 私はお礼を言って立ち去ろうとした。が、またその彼に腕を捕まれた。


「沙弥、俺にしとけよ」

「はあ!?」


 なんだこの男は。それに先程から私を呼び捨てにしている。私はムッとした。だがそんな私の気持ちが顔に出ていたのだろう。男は笑いながら言った。


「おれは俊。このイベントでは、気に入った相手の名前を書くんだよ。誰も書かないってことは出来ない」

「そうなんですか!?」


 私は驚いて男に聞いた。


「ああ、だからお互いの名前を書かないか?そうすればさっきみたいなことはなくなるぞ」


 私は考え込んだ。確かに一理ある。この場での安全確保のためにはそれがいいかもしれない。


「わかりました」


 私が返事をすると、俊は嬉しそうに笑った。よくみると、俊はいわゆるイケメンだ。何故こんな人が合コンになんて来てるんだろう。私の疑問がわかったかのように俊は言った。


「友人に無理矢理連れて来られたんだよ。で、一人でいても目立つし、困ってたんだ。沙弥も目立ってたぞ。それに壁際にいたから、俺と同じような理由なのかと思ったんだ」

「……その通りです。でも、目立ってましたか?」

「……自覚がないのか……」

「え?」


 ピンポーン


「フリータイムは終了です。お目当てのお相手の番号と名前を書いて提出してください」


 主催者がマイクで話し始めた。


「沙弥、俺の名前を書けよ」


 俊はそう言い残して去っていった。

 確かに俊しか番号も名前もわからない。だから彼の名前を書くしかないのだろう。私は俊の名前を書いて提出した。


 そして結果発表。


「男性、女性、それぞれ壁際に対面するように並んでください。今から呼ぶ方々はそれぞれお互いの名前を書いています。つまりカップル誕生です!」


 主催者の言葉とともに、カップルになった人達が発表されていく。


「男性23番 俊さん!女性62番 沙弥さん! おめでとうございます!」


 私はやはり先程の彼とカップルになったようだ。


 そしてパーティーも終わり、帰ることになった。私は友人とそのまま帰ろうとした。と、後ろから腕を掴まれた。


「沙弥、話がある」


 俊だった。


「沙弥、じゃあ私は先に帰るわね♪」

「え、ちょっ……」


 友人は楽しげに帰っていった。


「いい友人じゃないか」


 私はムッとして俊をにらみあげた。


「どういうつもり?カップルってのはその場しのぎのはずよ」

「俺はそんなことは言った覚えはないな」


 俊はニヤリと笑った。


「え?どういう……」

「沙弥、俺と付き合おう」


 意外にも真面目なその顔に私は驚いた。


「とにかくまずは連絡先だな」


 俊はそう言うと、私のスマホを取り上げた。そして赤外線通信をしている。


「勝手に何してるのよ!」

「まずはメールするよ。じゃあな沙弥」


 俊はそう言い残して帰っていった。そしてその日の夜、スマホにメール通知があった。


『沙弥、今日はありがとう。おやすみ』


 俊からだった。

 それから朝晩の挨拶のメールが始まった。でも不思議と嫌な感じはしない。メールのやり取りが楽しかった。


 これからどうなっていくのか、私にもわからない。そして、元カレのことは思い出さなくなっていた。

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