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カップル
ミーン、ミーン、ミーン。
蝉が鳴いている。夏の昼間は暑い。だから夕方にでかける。
『はな……』
『太郎……』
いつも同じ道ですれ違う。ようやく名前を知った。彼女の名前は『はな』。可愛らしい名前だ。『はな』、もっと君を知りたい。でもいつもすれ違うだけ。『はな』、君は俺をどう思ってるんだい?
いつも同じ道ですれ違う。あなたの名前は『太郎』。素敵な名前。凛々しく男らしい顔立ち。あなたは私をどう思っているのかしら。
いつもの道。
「会えた!」
どちらの言葉だったのだろう。
少しでも近づきたい。
「こら! 太郎!」
「はな!」
引き離される二匹。
「あ、すいません。うちの太郎が……」
「いえ、こちらこそ、はなが失礼しました」
「よく会いますね」
「ええ、そうですね」
「良かったら、そこの公園へ行きませんか」
「いいんですか」
「この子たちも仲良くなってくれると嬉しいですし……」
「そうですね」
『はな!』
『太郎!』
二組のカップルが出来たかのかどうかは、彼らだけが知る。




