新年
私と亮平はテレビを見ていた。だらだらと飲みながら。そして除夜の鐘が鳴る。少し遠いが古くからのお寺があるので聞こえるのだ。
私達は同棲している。もう三年になる。居心地は良いが、この先を考えなくもない。このまま同棲を続けるか、結婚するか、別れるか。来年はどうなるかなあ。私は除夜の鐘を聞きながら、そんなことを思っていた。
「トイレ」
彼が席を立った。ムードも何もない。熟年の夫婦のようだ。でもそれを私は気に入ってもいた。気楽な関係。
除夜の鐘が鳴り終わった。年明けだ。私達は初詣にはいつも翌日に行く。だから今日はもう寝るだけ。
カチャ
彼がトイレから戻ってきたようだ。私はドアに背を向けてテレビを見ていた。
「佳奈、これどうかな?」
「んー?」
私は彼の声に振り返った。
ぶほっっっ
私はお酒を吹いた。だって彼の格好が!なんでタキシード!?
「な、な、な、何してんの!?」
「えーと、借りてきたんだ」
それはわかる!家にあるわけがないのだから!
「だから、なんでそんなの着てるのよ!?」
「いや、だから、その、この格好の俺の隣に並んで欲しい」
プロポーズ!?そんな格好で!?
「ぶっ、あはははは」
「佳奈!」
こんな奴と結婚するのは私くらいだろう。
「いいよ」
私は答えた。




