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音楽で乙女は救えない  作者: ナツ
ルート:紅
134/161

スチル33.決着(紺&鳶)

 富永さんは、ベルク作曲のピアノソナタでエントリーしてきた。

 てっきりラフマニノフでくると思っていたので、曲名を見た時には嫌な汗をかいたが、聴き終わる頃には勝てる、と確信した。

 重厚かつダイナミックな彼の持ち味に深みをもたせる為、氷見先生が挑戦させたのだろう。あえて低音部を多用しない曲で新境地を開こうという意図は伝わってきたが、無調に近いシンプルな曲を独自の味付けで表現するところにまでは辿り着いていなかった。

 正直、助かった、と思った。

 来年は分からない。ミスタッチはゼロだったし、ポリフォニック(多声的)な展開部で垣間見せた繊細さは、今まで富永さんの演奏には見られなかったものだ。今年で良かった。

 このコンクールで勝てれば、それでいいのだから。


 真白ちゃんを排除した今、誰にも負ける気はしなかったが、それでも発表の時には心臓が止まりそうなくらい緊張した。


 両手をあわせ、額に押し当てる。

 私に祈る相手などいない。

 里香を助けて、とあの頃どれだけ祈っただろう。結果応えてくれたのは、あの男だけだったというのだから、滑稽な話だ。それでも、人知を超えた何かに縋らずにはいられなかった。


 どうか。

 どうか、お願いします。

 あの子に未来を下さい。


 

 「――続いてピアノ科。第一位は、エントリーナンバー8 玄田 紺」


 アナウンスの瞬間、全身に鳥肌が立った。

 ああ。

 里香。


 ようやく、私は。


 あなたを取り戻せた。




 「紺ちゃん!?」

 「コン!!」


 視界の端が真っ白な閃光で焼き尽くされていく。

 眩い光はみるみるうちに目の前の景色全てを白く塗りつぶし。

 



 気づけば私は、正方形の部屋に一人立っていた。窓はなく、壁は半透明。床もうっすら透け、濃い闇に散らばる星の輝きが見えた。

 

 ……ここはどこだろう。

 確か……そう、コンクールが終わり、観客席で結果発表を聞いていたはず。


 「うーん。こうくるとは思わなかったなあ」


 聴き慣れた声が、すぐ後ろから聞こえてくる。

 私は口角を引き上げ、わずかに首をひねって声のした方に視線を流した。

 斜め後ろにいつのまにか現れた一人掛けのソファー。まるで王のように、あの男は悠々と足を組み、肘掛に頬杖をついていた。


 「私の勝ちね。トビーの最終イベントをクリアしたわ」


 ゆったりと体を翻し、正面で向き合う。

 満面の笑みを見せつけてやると、男はやれやれ、と肩をすくめた。


 「もうちょっとで、マシロが堕ちてくれそうだったのに。そうしたら、ワタシの声を届ける隙が生まれた。逆転を狙えたのにさ。本当に、あと少しだったんだよ」


 親指と人差し指で小さな隙間を作り、男は自分の目の前に掲げる。


 「まあ、過ぎたことを残念がったって仕方ない。このゲームはワタシの負けだ」

 「では、あの子は生きられるのね?」

 「……コンは不思議な子だね。ワタシがキミを騙している可能性について考えたことは?」


 私は、鼻を鳴らして腕を組んだ。


 「人間風情ニンゲンフゼイに、嘘までつかなきゃ勝てないなんて、そんな屈辱にあなたが耐えられるとは思わない。それに、『契約は絶対』なのでしょう? あなたは確かに異形の存在だけど、絶対的な上位者ではないということだわ」

 「ちぇっ。初めて見たときは、頭の悪そうな子だと思ったのになあ」


 非常に失礼なことを言ってきたが、まったく気にならない。

 そんなことより、確認しておかなければ。


 「質問に答えて」

 「はいはい。ゲームでは勝者が絶対だからね。仰せのままに」


 男は豪奢なソファーから立ち上がり、私の前に片膝をついた。


 「しちは返そう。最初に説明した通り、キミは18のクリスマスに、この世界から切り離されて元の世界に戻ることになる。マシロへの守秘義務も解除されたから、いつだって好きな時に、この賭けについて話してくれていいよ。カノジョには選択肢があるしね。キミと共に元の世界に戻るか、キミと別れてこの世界で生きていくか」


 わざとらしく指を折って数え、男はふう、と溜息をつきながら立ち上がった。


 「これからどうなるか、ワタシは遠くから見物させてもらうことにするよ。それはそれで面白そうだし、労力を払っただけの価値はあった」


 自分に言い聞かせるような口調に、思わず笑ってしまう。


 「それは負け惜しみ?」

 「なんとでも。少なくとも暇は潰せたよ、コン。キミが最後まで狂わず、持ちこたえてくれたお陰だ。ただの人間にそんなことが出来るとは思わなかった。一つ賢くなったな」


 トントン、と美しい指でこめかみを叩き、男はそれは楽しげに笑った。


 「じゃあね、コン。再来年のクリスマスに迎えに来るよ。それまで、よい青春を!」


 鈴を震わすような声が辺りに響き渡る。

 半透明な壁が一枚、そしてまた一枚と剥がれていき、私は空中に放り出された。


 急激な重力を感じ、全身が飛び跳ねる。

 ハッと我に返った先は、大ホールの観客席だった。


 「玄田! 大丈夫か!」


 水色の髪が視界に入る。

 こんな時、いつも私を気遣ってくれた兄はここにはいない。消えた真白ちゃんを探して、学院中を走り回っているはずだ。


 「……ごめんなさい。大丈夫」

 「表彰が始まる。ステージに上がれそうか? 無理なら、後藤先生を呼ぶけど」

 「ええ。行けるわ、ありがとう」


 紅が私のことを頼んでいったのだろう、珍しく蒼くんが心配げに眉を曇らせている。真白ちゃん以外に関心を示すこと自体、まれな彼が。


 「ましろなら、きっと紅が見つける。心配するな」


 的外れなその言葉に、私は思わず噴き出しそうになってしまった。

 

 

 ――『紺。コンクールには真白も出ることになったよ』

 

 夢見るような表情で、トビーは私に告げた。

 

 ――『僕が大切に守り育てるべき“金の卵”はどちらなのか、これでハッキリする。楽しみだな。……あ、そうそう。あんまり生意気なのも困るし、軽くしつけたけど、怒らないでね?』

 

 イベントの相手じゃなければ、私はトビーに手をかけたかもしれない。


 ねえ。私が、閉じ込めたのよ。

 コンクールに勝ちたいが為に、あの子からピアノを弾く機会を取り上げたの。理事長トビーに脅され、悩んだ挙句ボロボロになるまで練習していたのも知っていたのに、助けようともしなかった。

 

 こんな汚い私が、どこまでも真っ直ぐなあの子とこのまま一緒にいられると思う?

 出会った頃は、共に帰ろうと説得するつもりだった。でも、途中で気づいてしまった。里香はもう、島尾真白になったんだ、って。

 幸せそうにピアノを奏でる真白ちゃん。この世界には、家族も揃っている。紅も、蒼くんだっている。

 

 彼女りかは、この世界でみんなに愛されながら生きていく。

 私の賭けのことなんて、知る必要はない。

 

 大好きだよ、真白ちゃん。

 前世でも、現世でも。

 あなたが私の光。




 表彰式が終わり、そのまま解散となる。


 「うちらは、寮の方を探してくるわ。見つかったら、連絡してな!」

 「分かった。私と蒼は本館と露草館アウトゥンノハウスの方を探してみるから」


 上代くんと栞ちゃん。そして美登里ちゃんと蒼くんが急ぎ足で席を離れていく。彼らの焦った様子に罪悪感を覚えてしまい、何を今更、と自分の偽善に吐き気がした。

 他の生徒たちも興奮冷めやらぬ顔でコンクールの寸評を口にしながら、桔梗館エスターテハウスを出て行った。

 先生たちが真白ちゃんのご両親に連絡を取る前に、彼女を準備室から出さなくては。


 唇を引き結び、私は今にも失神しそうな表情をこしらえた。

 そのまま、後藤先生の元に向かう。


 「先生……真白ちゃんは、まだここにいる気がするんです」

 「心当たりがあるの!?」

 「いいえ。でも、彼女が自分から棄権するなんて考えられない。何かの手違いで、どこかに閉じ込められているのかもしれないんじゃないかって……。前の事件のこともあるし、私、不安で」


 後藤先生は額を押さえ、大きく溜息をついた。


 「そうね。逃げ出すなんて信じられないもの。でもね、エスターテは全室見回ったはずよ。――待って。……準備室には行ってないかも」


 ハッと顔を上げ、慌てて踵を返した後藤先生の後を追う。

 大ホールを出たところで、息を切らせた紅と鉢合わせした。


 「終わったのか。真白は?」


 黙って首を振る。

 コンクールの結果はどうでもいいのね。

 笑みが浮かびそうになるのを、慌てて押さえ込んだ。

 紅の頭の中には、真白ちゃんのことしかないらしい。紅は低く毒づき、乱暴な手つきでネクタイを緩めた。


 「くそっ! どこにいるんだっ」

 「これから後藤先生と準備室を見に行くところなの」

 「……準備室? あそこか!」


 汗で張り付いた前髪をうっとおしげにかきあげ、紅は再び駆け出した。


 「先生は、予備の鍵を取ってきて下さい! そこにいるとするなら、閉じ込められてる可能性が高い」


 振り向きざま叫んだ紅に、後藤先生は素早く頷き、管理室の方へと走り出す。

 私は大きく息を吸って、これから起こる事に備えた。

 

 卑怯な真似が大嫌いなあの子のことだ。私を心底、軽蔑するだろう。


 覚悟はあったはずなのに、いざ対面するとなると、膝が震えてくる。

 こうするしかなった。いちかばちかの勝負に出ることは出来なかった。

 恨まれるくらい、なによ。

 物言わぬ里香の姿を、必死に思い浮かべる。

 あの子の未来を繋ぐためなら何だってする、と誓ったはずだ。

 自分を奮い立たせながら、私も準備室へと向かった。



 手すりに掴まりながら階段を下りたところで、扉に耳を押し当てている紅を見つけた。


 「なに、してるの?」

 「……真白だ。ここにいた」


 今にも泣き出しそうに目を細め、紅はそのまま扉にもたれかかる。

 

 「やっぱり鍵がかかってるな。先生を待とう。――真白のスクリャービンのソナタだよ。聴こえるだろ? ほら」


 練習室には、予備のグランドピアノが置いてある。

 そっと扉に耳をあてると、ついさっき私が弾いたばかりのあの曲が聞こえてきた。すごく小さな、かすかな音。それでも、すぐに真白ちゃんの音だと分かる。

 

 「あいつらしいな。酷い目に合わされてるってのに、全くのノーミスだ」

 「紅……」

 「真白にとって俺は、簡単に代用の効く人間なのかもしれない」


 紅は自嘲するように微笑み、それから開かない扉に拳を強く押し付けた。


 「それでも好きなんだ。俺が、真白じゃなきゃダメなんだ。何もしてやれない癖に、傍を離れられない」

 「真白ちゃんも、きっと同じ気持ちだよ」

 「……そうだといいのにな」


 紅は暗い表情のまま、小さく呟く。

 これ以上、なんと声をかければいいのか分からない。

 二人の間に溝を作っているのは、たぶん私たちの秘密。そして、彼女が紅に全てを打ち明けられないのは、私のせいだろう。

 許してくれ、とは言えない。そんな資格はない。

 紅を孤独から救えるとしたら、それは真白ちゃんだけだ。


 「鍵、取ってきたわ!」


 ちょうどその時、息せき切って後藤先生が到着した。後ろには、トビーを引き連れている。

 私は、グッとお腹に力を込めた。感傷的になっている場合じゃない。

 ここからが、第二ラウンドだ。

 流石の理事長も真白ちゃんの失踪には驚かされたようで、ピリピリとした空気を纏わせていた。


 「準備室に内鍵はないですよね? 真白はここに閉じ込められてます」


 紅はてきぱきと説明しながら、動揺する後藤先生から鍵を奪い取り、準備室の扉を開け放った。

 トビーの存在は無視している。真白ちゃんと彼とのいざこざに、薄々勘づいているのかもしれない。


 「ましろ!」


 突然差し込んできた光に、真白ちゃんは眩しそうに目をすがめ、鍵盤から指を離した。

 たくさん、泣いたんだろう。すべらかな頬に涙の筋が残っている。

 そんな権利などないのに、胸が激しく痛んだ。


 紅が駆け寄り彼女を抱きしめると、真白ちゃんは椅子に座ったまま紅の腕にすがりついた。

 彼女がなにかを口にし、紅は激しく首を振る。

 遠目だから何を話しているのかは分からなかったが、紅が安堵に満ちた表情を浮かべたので、ホッと胸をなで下ろした。


 「ここは僕が。後藤先生は本館に戻って、職員に知らせてくれませんか? 島尾さんの友人も彼女を探しているはずなので、見つかったと教えてやって下さい」

 「分かりました。後はよろしくお願いします」


 後藤先生が立ち去るやいなや、トビーはつかつかと真白ちゃんの元へと歩みを進めた。


 「……まさかと思うけど、逃げたんじゃないよね?」

 「違います!」


 勢いよく立ち上がり、真白ちゃんはすぐに否定した。怒りのこもった眼差しで、トビーを睨みつける。そんな彼女を庇うように、紅が真白ちゃんの前に立った。


 「第一声がそれですか? 意に反して閉じ込められ、コンクールを棄権せざるを得なかった生徒に対して、その態度はないんじゃないですか」


 冷ややかな声と警戒心をあらわにした表情。

 トビーは、そんな紅を一笑に付した。


 「君には聞いていない」

 「――俺も、いつかは社会に出るんですよ。山吹さん」


 真白ちゃんがたまらず紅の手を握る。

 兄は落ち着き払った態度で、やさしく彼女の手を握り直した。


 「どういう意味かな?」

 「いつまでも虚仮こけにされっぱなしでいるつもりはない、ということです」


 紅の宣戦布告に一瞬あっけに取られ、トビーは今度はクスクス笑い始める。


 「……いいね、そうでなくちゃ。肝に銘じとくよ」

 「ええ。そうして下さい」


 華やかな笑みを浮かべ、紅は一歩も引かずトビーの嘲笑を受け流した。

 思わず見蕩れてしまったのは、身内贔屓ではないはずだ。

 その証拠に、真白ちゃんも大きく目を見開き、紅を見上げている。私も、正直驚いていた。

 

 挑発は通じないと悟ったのだろう。トビーは気を取り直すと、真白ちゃんに状況を説明するよう求めた。


 「えっと……ここへは探し物をしに来て。それで……気づいたら、鍵がかかっていました」


 真白ちゃんは嘘がつけない。

 しどろもどろな穴だらけの言い訳に、紅は小さく呻き、空いてる方の手で額を押さえている。

 

 ――どうして?

 あんな目に合ったのに、どうして私を庇えるの?


 トビーは、衝撃を受け立ち尽くした私と顔を真っ赤した真白ちゃんを見比べ、深々と溜息をついた。


 「犯人はいない、と言いたいのかな?」

 「そうです! 私がうっかりしてました。コンクールに穴を開けたことは、深くお詫びします。奨学生待遇を取り消されても、退学処分になっても構いません」


 青鸞に入るのが、彼女の夢だった。

 消えるのは、私の方だ。


 「真白ちゃん……もう」

 「紺ちゃんは黙ってて!」


 ものすごい剣幕で真白ちゃんは私を制すると、挑むようにトビーを見据えた。


 「理事長の好きなようにすればいい。私は指を折られたって、またピアノを弾くわ」

 「簡単に言うね。今のようには二度と弾けなくなったとしても、同じことが言えるかな?」


 トビーの挑戦的な台詞の影にある真意に、真白ちゃんはどこまで気づいているんだろう。


 「指が一本あれば、メロディは弾けるんですよ、理事長。完璧に磨き上げられた完成品だけが、音楽だとは思いません」


 ああ。なんてあなたらしい。

 強がりなんかじゃなくて、心からの言葉だと分かった。

 真白ちゃんの真摯な眼差しから顔を背け、トビーは馬鹿馬鹿しい、と吐き捨てた。

 この人には、きっと分からない。

 真白ちゃんの中の音楽は、誰にも触れることの出来ない場所で奏でられている。


 「……脅されてたのか? あの首の傷も、こいつが?」


 黙ってやり取りを聞いていた紅の瞳に、激情が宿る。

 トビーは天を仰ぎ、首を振った。急に年を取ったように見えた。


 「分かったよ、もういい。君は僕の手に負えそうにない。このことは、こちらで処理しておく」


 そして、さらに言い募ろうとする紅に向かって、爆弾を投げつけた。


 「ここで引くのが君の為でもあるよ、成田くん。彼女がコンクールに出られなくなって、一番得をした人間が誰なのか。なぜ、そんな見え透いた嘘までついて、犯人を島尾さんが庇うのか。――分かるだろう?」

 

 紅は信じられない、というように真白ちゃんを見つめ、それから私の方を向く。

 疑惑と怒り、かすかな哀しみ混じりの視線に糾弾され、私は堪えきれず俯いた。

 いいから早く帰れ、とトビーに急かされ、私たちは全員桔梗館の外に出ることになった。


 すっかり日は傾いていた。澄んだ空気が頬をなぶる。

 真白ちゃんの隣を歩いていた紅は足を留め、まっすぐに私を振り返った。


 「これから真白を寮まで送っていくけど、帰ったら話がある。俺が玄田の家に行くか?」

 「――いいえ。私が出向くわ」

 「分かった。では理事長、俺たちはこれで失礼します」

 「紺ちゃん!」


 真白ちゃんが不安に満ちた叫び声をあげた。

 私とトビーを残して去るわけにはいかない、と踏ん張るのを、紅が驚いた顔で宥めている。

 良かった。私と彼の関係は、兄には気づかれていないのね。


 「行って、真白ちゃん。私もすぐに帰るから」

 「でもっ!」

 「お願い。これが、最後だから」


 最後のイベントというつもりで口にした台詞の言外の意味を、正しく真白ちゃんは理解してくれた。

 こちらに来ようともがくのをやめ、食い入るように私を見つめてくる。


 「――じゃあ、クリア出来たんだね?」

 「ええ。……勝ったわ」


 急に何を言い始めたのだろう。

 そっくりな表情で眉をひそめた紅と理事長が視界に入る。

 大声で笑い出したい気分になった。

 

 「私も自由になったの。真白ちゃん、今まで本当にありがとう」


 真白ちゃんはぎゅっと唇を噛んだかと思うと、うわああ、と声を上げて号泣し始めた。

 ポロポロと大粒の涙をこぼし、手の甲で頬を拭っている。

 

 こんな風にあけっぴろげに泣くあなたを最後に見たのは、8歳の夏休み。家族で出かけた海で、私が危うく溺れかけた時以来だね。

 あの時も、良かった。良かったって、あなたは泣いた。

 

 再来年のクリスマスまで、まだ時間はある。

 一生分のあなたをこの目に焼き付けることの出来る猶予期間に、私は改めて感謝した。




◆◆◆◆◆◆



 前作主人公の成果


 攻略対象:山吹 鳶

 イベント名:見せつけた才能


 無事、クリア


 最後のスチルが開きました

 


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