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41.

 正直、ここのお茶は美味しくない。


 実家でお父様やラルフが淹れてくれるお茶の方がよほど美味しい。


 わが家では、昔からお茶は男性が、具体的にはお父様とラルフが淹れるのが習慣になっている。


 とはいえ、ふたりともちゃんとした作法に則っているわけではない。テキトーである。それでも、ラザフォード公爵領で収穫される茶葉のお蔭か、淹れ方に関係なく絶品なのだ。


 その証拠に、お母様とわたしだと、男性陣よりよほどテキトーに淹れてしまう。それでもなんとか「美味しい」といえるほど、質の良い茶葉である。


 それはともかく、美味しいとはいえないお茶を飲んでから、口を開いた。


「殿下、じつは呪いのことを調べているのです。国王陛下や王太子殿下を救うには、その、ほんとうにわたしでないといけないのでしょうか? わたしが、なんといいますか、わたしが彼らと結ばれないといけないのでしょうか?」


 はしたなさすぎるので、こんな表現しか出来なかった。


「というか、国王陛下や王太子殿下は、どうやってそんな方法を知ったのでしょうか? 呪いをかけたモーティマー家の唯一の生き残りがわたしですよね? どうして知りえたのでしょうか?」

「なるほど。書庫でその手がかりを探していたんだね」


 無言でうなずいた。


「もしかして、その手がかりが記載されている書物は書庫にないだけなのでしょうか?」


 いまさらながら、王太子の寝室内にたくさんの書物が散乱していたことを思いだした。


 そういう書物があるのなら、手元においておくだろう。


 すくなくとも、わたしならそうする。


 だとすれば、書庫ですごした時間がムダになるわけだ。


「それを知って、どうするつもりなのかな? もしかして、ふたりを救おうとでも?」


 ローテーブルをはさんだ向こう側で、ハリソンの切れ長の目が細められた。


「王太子はともかく、当時王太子だった陛下はあのことに無関係だったわけじゃない。つまり、きみの仇だ。あのことは、冤罪だった。彼らは、強大な力を持っているがために怖れられ、陥れられただけだ。それなのにきみは、ふたりの命を助けようとでもいうのかい?」


 黙っていると、というかなんと答えようか考えていると、ハリソンはさらに尋ねてきた。


「たしかに、まったく恨みに思っていないというのは嘘になります」


 慎重に切り出した。


「しかし、やはり見捨てるというのはいかがなものかと。もしもわたしにそんな力があるのなら、助けてあげてもいいかな、なんて。ふたりを助けることを条件に過剰な褒美をねだれそうですもの。もっとも、妃にしてもらうこと以外は、ですが。しかし、残念ですがいまのところそんな予兆さえありません。というか、そんな力があるなんて思えません。ですから、そんな力を引きだす方法かなにかがあれば、と」


 だから書庫で調べているんです。


 と言いたかった。


 まったくの嘘ではない。ただその対象が「あのふたり」ではなくラルフなだけである。


 予兆についても同様だ。ラルフの症状がほんのわずかやわらいだのは、ただの偶然かもしれない。


 そして「過剰な褒美」については、ただの欲まみれのおバカさんと思われたかっただけである。


「ほんとうに? ほんとうにそう思っているのかい? 陛下と王太子を、いや、伯父上と従兄弟を助けようと?」


 ハリソンの切れ長の目が細められた。


「ええ、まぁ……」


 まったくの嘘やでたらめではない。


 ハリソンの従兄弟といえば、ラルフもそれにあたるのだから。

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