災いの果実
昨日はササナさんに色々と町を案内して頂きました。
新たな目標も出来ました。ただ予想以上にお金が必要なのもわかりましたけど…。
こうなってくると故郷の村で商人の方が言っていた、
会話しているだけでたくさんお金をくれる仕事が惜しい気がしますね。
とはいえ稼がないと貯まらないですね。今日も依頼を受けようと思います。
今日はマリーと一緒なので、きっとガッポリとお金を稼げるはずです。
「遅いですわ、メルシャ」
私がギルド前に行くとすでにマリーが来ていました。まだ人もまばらなのに早いですね。
「そ、そんな楽しみだったから早く来たなんてことこれっぽっちもないですわ!」
そう言って顔を赤くします。まだ私は一言もしゃべってないですけど、
どうやらマリーの頭の中では私との会話が行われたようです。
「おはようございますマリー。今日も霧の丘に行くんでしょうか?」
「ええ。せっかく教えてもらったのですから、活用しない手はありませんわ!
今日はちゃんと依頼もうけておきましょう」
どうやらマリーも依頼を受けなかったのを悔んでいるようですね。早速私達はギルドに入ります。
霧の丘の依頼…依頼…いくつかありますね。
「泥人形、グレムリン、ミストバードの依頼を受けると良いですわ。
どれもこの間戦ったことのある敵ばかりだから、楽勝ですわ」
ふむふむ…。マリーに従ってその三つの依頼にOKをします。
もうひとつ霧の丘と書いてあるものに怨恨の霊というのがありますけど、
これはうけなくてもいいんでしょうか?
「そ、それはレベル15の敵ですから無理をして戦う必要はありませんわ!
決して幽霊が怖いわけではありませんことよ」
なるほど。この魔物は強いんですね。それならたしかに無理をする必要はありませんね。
ちなみに故郷の森には死霊が時折現れることがありました。
どうも森で行き倒れになった方の霊が魔物化してしまうようなんです。
魔法じゃないと倒せないので、たしかに面倒ではありましたね。
「それじゃあ出発前に食事をとることにしましょう。
メルシャは攻撃力か敏捷性のボーナスがいいかもしれませんわね。
わたくしは…敏捷性のボーナスにしますわ」
いまいちボーナスが理解できないですけど、
マリーの助言に従って攻撃力か敏捷性の表記されている食事を選ぶことにします。
ホットドックとパンプキンパイ。どちらも食べた事のない料理ですね。悩ましいです。
……ここはホットドックにしておきます。現れたのはパンにウィンナーを挟んだもの。
サンドイッチの仲間でしょうか。
味は………結構刺激的ですね。粒粒した黄色いものが結構辛いです。でもやっぱり美味しいです。
しばらくはサンドイッチの代わりにこれを常食することにします。
「メルシャは美味しそうに食べますのね。
味は感じますけど、やっぱりお腹に入らないから味気ないですわね…」
マリーいまいち美味しくなさそうですね。
ちなみにパンプキンパイを食べています。選ばなくてよかったです。
「さぁそれではまいりましょう!」
食事も済んだしいよいよ討伐依頼ですね。霧の丘へと向かうことにします。
道中はソーングラスくらいしかいませんね。相変わらず平原の至る所で蠢いています。
魔族はソーングラス程度でこの町を落とせると思っているのでしょうか?
英雄への道を歩み始めたこの私がいるなんて、魔族にとっては誤算だったでしょうね。
申し訳ないです。
霧の丘に到着したら前回と同じように魔物を探して討伐を始めます。
前回と違うのはマリーが魔法を交えながら戦っていることでしょうか。
「ブラッディレイン!」
マリーの魔法が炸裂すると赤い雨のようなものが魔物に降り注ぎます。
ある程度の範囲をまとめて攻撃できるので複数の魔物が現れた時は便利ですね。
「マリーのその魔法凄いですね。私も町で習得できるでしょうか?」
「ふふっ、これは吸血鬼の種族特性の魔法ですから、メルシャは習得できませんわ。
メルシャは代わりに精霊術を習得できるので、そちらを頑張ればいいと思いますわ」
なんと、吸血鬼でないと使えないんですね。
マリーに噛んでもらって吸血鬼になれないでしょうか。
あっ、噛まないっていってましたね。
私の精霊術はかなり地味…というか効果もそれほど劇的なものはないんですよね。
微風を起こしたり、水を生成したり、火種を起こしたり、穴を掘ったり。
便利ではありますけど、あくまで生活の助けといったかんじです。
だからマリーのような攻撃魔法には惹かれるものがあります。
でも吸血鬼じゃないと覚えられないのなら諦めるしかないですね。
狩りは順調です。やはり相性がいいのでしょうか?
一人だと苦戦すること間違いなしだと思いますけど、二人だとかなり楽勝ですね。
おっと、また慢心するところでした。
魔物は色々なものを落とします。鈍色のコイン…小悪魔の牙…霧の羽根…
驚いたのはラセムの実を落とした事ですね。
なんでこんな魔物が…。たしかに美味しいとは思いますけど、
食べる前に倒してしまってごめんなさいですね。
「メルシャに差し上げますわ。わたくしはクランに所属していませんもの。
一応全ての魔物が低確率でおとすそうですけど、
やっぱりレベルによって落としやすさが変わるのかもしれませんわね」
そう言ってラセムの実を手渡すマリー。
どうやらこのラセムの実…魔物にとっての大好物のようですね。
天上の方々も好きそうでしたし…まさかこの実の取り合いが神魔の戦いのきっかけに!?
それを採るのが上手い私はひょっとしたら貴重な人材なのではないでしょうか?
いえ、これもまた英雄の資質というものなのかもしれません。
「なんですのそのドヤ顔。………ラセムの実がそんなに好きなのかしら…」
マリーが何か呟いてますね。でもよく聞き取れなかったです。
「あとミストバードを二体倒せば依頼もちょうどきりがいいですわね。
それを倒したら町に戻りましょうか」
マリーの言葉でカバンの中の拾ったものを見ます。
コインが10枚、牙が15個、羽根が13枚。五体ごとに報酬が払われるので
たしかに丁度ですね。かなりの報酬が期待できます。
うっ…自然と顔がゆるんでしまいますね。
「メルシャは顔に出やすいですわね。まぁ気持ちはわかりますけど…。
予想以上の成果ですものね」
そう言うマリーも嬉しそうです。
私だけじゃなくてマリーも顔に出やすいですね。間違いありません。
それじゃあミストバードを…ん? なんだか半透明な人影が…。あれってひょっとして…。
「ひっ!? 怨恨の霊ですわ!」
マリーが少し上ずった声で魔物を見ます。どうやら強敵と言っていた魔物のようです。
死霊のように魔法しか効かないとすれば今の私には厳しい相手ですね。
……いえ…待ってください。
今の私には魔法よりも強い力…女神さまの加護が宿っています。
魔物を光に変えるこの力なら死霊にも通用するかもしれません。
「マリーいけますか?」
「くっ…だ…誰に言ってるんですの! このわたくしが憶するはずがありませんわ!」
マリーはそう叫んで魔法の詠唱に入りました。ではその間に私は魔物をひきつけることにします。
怨恨の霊は故郷の森で見た死霊そのままなかんじですね。動作は遅いので先手はいただきます。
駆け抜けざまに魔物を薙ぎ払います。うん、やはり予想通り攻撃が効いています!
とはいえ流石は強敵というだけありますね。顔色一つ変えずに私に向かって掴みかかろうとします。
ふふん、でもその程度の動きでは捕まえることはできませんよ。
右へ左へとステップして攻撃をかわしながら斬撃を加えます。
マリーの魔法も炸裂します。赤い雨のようなものと、初めて見る黒いボールのようなもの。
それらを交互に放ちながら魔物の体力を削ります。
やがて魔物の動きが止まると、光となって消滅しました。後に残るのは…ラセムの実。
……この実はしっかりと天上の方達にお供えしておきます。
ですから悔いなく天上世界に逝ってくださいね。
「はぁ…はぁ。やっぱり属性的にわたくしの魔法だと厳しいですわね。でも、やりましたわ!
このわたくしが幽霊なんかを怖がるはずありませんわ! ほーっほっほほ」
マリーがいつものように高笑いを上げます。でもその言葉で私は悟りました。
マリーは幽霊が怖かったんですね。
申し訳なかったです。でも迷える魂を天上に送るのも英雄の務め。
これからもがんばりたいと思います。
町に戻ってさっそくギルドで達成報告です。
気になる報酬は…合計で30000エリン!!! あっ、半分になりました。
どうやらパーティを組んで依頼を受けた場合は
報酬も分配されるみたいですね。でも15000エリンは大金です。
頑張れば蒼なんとかの短剣も買えるかもしれません。
でもその前に魔法を覚えたいですね。あとササナさんが言うにはスキルも役に立つとのことでした。
魔法とは違うんでしょうか? とにかく何をするにもお金が必要のようですね。
商人の方が言っていたように、人間の町ではお金が全てとは本当のことでした。
マリーとは昼で別れることになります。また明日も同じ時間に待っているからとのことです。
天上の方なのに本当に気さくな方です。でも吸血鬼なのに朝から元気でしたね。
いえ、夜は眠くなるので私としてもありがたいですけど。
さて、お昼はお楽しみな屋台巡りです。昨日はササナさんと一緒だったので抑えましたけど、
今日は広場で色々なものを見て回りたいと思います。
でも使いすぎないように気をつけないとですね。
広場では光る文字を出している人がたくさんいます。
一人ずつ見て回ることにしましょうか。
ふむ…ふむ…ランプ鳥のハンバーガー…
ハンバーガーということはこの間食べたものと同じ種類の料理でしょうか。気になりますね。
アイスクリーム…なんでしょう。妙に惹かれる名前です。
ポテトパイ……パイはやめた方がいいかもしれません。
ふむ…ふむ…決めました! ペペロンチーノ! どんな料理か想像できないですね。
でも名前が気に入りました。近所に住んでいた幼馴染がペロチーノという名前でした。
懐かしいですね。もうずいぶん会っていない気がします。
肝心の料理は…なんでしょうか…細長いですね。結構食べにくい……んっ!? 味は結構刺激的ですね。
でもついつい食が進みます。こういった刺激的な料理が故郷の村ではほとんどなかったので新鮮です。
もう少し食べやすければ良かったんですけど、美味しかったので満足です。ペロチーノには感謝ですね。
お腹も満足したので、他の立っている人も色々と見て回ることにします。
私と同じように見て回ってる人が多いですね。こうしてみると店が並んでいるようにも見えます。
武器や防具…あとは素材なんでしょうか? 驚いたことに竜の牙というものまで売っていました。
竜の素材が売買されているなんて故郷の村の人達が聞いたら卒倒しそうです。
竜とは故郷の村の戦える人達全員で戦っても、勝てるかどうかくらい強いらしいです。
子供の頃に悪戯して怒られたら、「竜の前に連れていくぞ」とよく言われてました。怖ろしいですね。
でも今考えたら、大人も怖くて誰も連れて行きたがらないですね。怖がって損しました。
そう言えば昨日ササナさんと別れる時に、
渡したいものがあるからと夕方クラウンハウスで落ち合う約束をしていました。
もうしばらく売り子の人達を見たら、クラウンハウスに行くとしましょうか。
でも渡したいものっていったい…。




