24-5オブザデッド
今井千奈子は、顔面偏差値はいまいち。黒スーツに赤いハイヒール装備の記者である。魔導射影機を武器に、主に物理攻撃の効かないゴースト系の敵を除霊させてきた。戦い終わってみれば、人生でまたとない稀有な経験を手にすることができただろう。特に殿下と密着26時的なアレは、記者として他の記者よりも何ランクも先に行けた気がする。王城にフリーパスで入れるアドバンテージは、これからも今井千奈子をオンリーワンに押し上げてくれるだろう。やったね!
あかつきは職業ハードボイルド(30代)だ。ハードボイルドで給料をもらい、ハードボイルドで飯を食い、たまに休日出勤もこなす。プライベートの時間はきっと気のいい優しいおじさんに違いない。一度仕事の時間になると、冷めたピザをぬるいブラックコーヒーで流し込むのも厭わないし、タバコを咥えた口元には無精髭が生える。王国を救ってもなお、彼は己の手柄を誇らない。それはハードボイルドな行いではないからだ。プロはやはり違うのだ。
九鬼龍騎は暴走族だ。オールバックに特攻服を着て、メリケンサックでスケルトンの腰骨を特に砕いていた。地元に帰った九鬼龍騎の名は伝説になった。なんせあのネクロマンサーを正面から撃破したのだから。その凄まじいまでの武勇伝に、舎弟どもはマジ最高にシビれまくりだ。チーム悦苦須禍裏刃亜亜亜の総長となり、これからも伝説を作り続ける。さあ、次はあの峠で風になろうじゃねえか。
フリーターのてぃーちっくは、ラストリゾートの仮面を武器に(たぶん振り回すとか投げつけるとかして)戦っていた男だ。青ジーンズに萌え系Tシャツ。fgoの黒髭をリスペクトしている。らしい。黒髭は海賊として悪逆非道を尽くし伝説になった男だ。fgoの彼はそこまでではないが、やはり残忍な一面を胸に抱えている。てぃーちっくの人生経験は彼に遥か及ばないが、しかし王国軍の戦いを通じて一歩だけ彼に近づくことができただろう。それは間違いない。
平安女性ワナビのパープル式部は 十二単の幼女だ。十二単は着るのも歩くのもめっちゃくちゃ大変だが、それで24時間の工程を貫き通したのだから、ただの幼女ではないだろう。そう、彼女は高貴な幼女なのだ。王国軍に参加し、豊富過ぎるネタをゲットした彼女はその後間もなくワナビからプロデビューすることになる。プロの世界は大変だが、しかしこれからもパープル式部は戦い続けるだろう。彼女は彼女の戦場で、これからもずっと──。
けもりあはロリッ娘巨乳ツインテールの天使だ。ネクロマンサーを危ぶんだ創造神が遣わしたのだ。エスカリボルグを手に、ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ~とその創造神までぶっ飛ばしてしまったのはさすがにやり過ぎということで、あとでめちゃめちゃ説教を食らったのだが、けもりあは全然応えていなかった。先輩天使たちもビビるような活躍で、きょうも王国の空を飛び回る。でもまあ、人の世もちょっとは楽しかったかな、なんて。
吟遊詩人のサツキは、手回しオルガンを武器に世界各地を回っていた。その旅の途中、新しい歌を作るために手伝うのもやぶさかではないなと王国軍に参加したが最後、とんでもない戦いに巻き込まれてしまった。けれど、それを後悔するような気持ちは微塵もない。九死に一生を得た経験は、彼のリリックを極上な神曲へと引き上げてくれたのだから。サツキの名は間もなく大陸全土に轟くだろう。ネクロマンサーを倒した68名の伝説も、同じように──。
死亡腐乱君は世紀末モヒカンの姿をした掃除屋だ。けれども武器はタンポポだ。なぜタンポポなのかわからない……。でもまあ、きっと掃除をしてきれいになったそのお部屋にタンポポを添えてゆくという、小粋な気遣いなのだろう。タンポポ神の祝福を受けているのかもしれない。この世の悪をお掃除した彼は、これからもお掃除を続けるのだろう。死亡腐乱君が『掃除』すべきだと考える、そのすべてを片付けるまでは。
滅びゆくニコニコの英雄、DAISUKE。グラサン(意地でも取らない)、2000年代初頭に流行ってそうなダサい服、ジェルでガッチガチに固めた動かない髪の毛。2000年代初頭というのがこのファンタジー世界でいつを指すのかちょっとわからないのだが、神も認めた45度を武器に彼は世界を救った。どんなところでも、その場所でオンリーワンの名声を得られるというのは凄まじいことだ。成功する者には、それだけの理由があるのだ。DAISUKEは間違いなく英雄だったのだ。そして今回の一件で、その名は不動のものになったのだろう。
リアジュウは産業用爆薬だ。「愛してる」と表紙に書いてある取扱い説明書が武器で、時限タイマー付きダイナマイト。簡単に腰に巻けるベルト付きという外見をしている。これはエピローグとまったく関係ないのだが、今回なぜか自爆能力をもっている人がめっちゃ多かった。たぶん10人ぐらいいた気がする。もう全員まとめて一斉に殺してやろうかと思ったのだが、最初に30人ずつがチームにわけてダンジョンを攻略する流れを考えたので、そのアイデアはお流れになってしまった。というわけで、リアジュウは最後まで生き延びた。きっと彼だって、アンデッドを爆発させるよりは、未来のためにその体を役立てたいと望むだろう。その最後は、人々の夜を照らす石炭を掘るための採掘場での発破爆薬として使われたのだ。ってこれエピローグじゃなくてもうあとがきだな!!! リアジュウ大爆発!!!!




