表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/30

22オブザデッド


 86人+殿下+フェフィーナは、ゆっくりと王城の回廊を上ってゆく。


 城の中は驚くほどに静かだった。


 けれど、どこからかひしめく無数の気配が伝わってくる。アンデッドは声なき生き物。物陰から急に現れてもおかしくはない。


 油断せずに歩いていこう。仲間たちの死をたくさん見てきた王国軍だが、決して慣れることはないだろう。いや、慣れたくないだけだ。


「ねえ、殿下」


 横を歩いていた歴史学者のギルバートが口元に笑みを浮かべていた。


「まさかあの伝説のフェフィーナ姫と行動を共にできるなんて、歴史学を学んでいる身としては興奮してしまいますな」

「そういうものなのかな……でも、わたしにとっては生まれたときからずっと一緒にいる大臣だから」

「ああ、ああ、そうですね、もちろん」


 司書のかぐやもまた、殿下に話しかけてきた。


「殿下は王国を取り戻したら、なにをしたいですか?」

「そうだなあ……。とりあえず弔いかな、この戦いをともに過ごしたみんなを」

「……ええ、そうですね」


 そのときだ。なんの前触れもなく天井から巨大なシャンデリアが落下してきた!


 突然の判定にファンブルを出したものが死亡する!



 成功者 85/86



 ガッシャーン! と凄まじい音とともにシャンデリアが床を叩いて砕け散った。ちょうどそこにいたのは、フルメイルを着た漁師の古宮だった。古宮はぺっしゃんこになった。鎧の隙間から染み出した赤黒い液体が床を濡らす。


 釈然探偵の白河黒船はうなる。


「なんてことだ……。あと少しでラスボスだったというのに」

「待って! この話はどうやら大量の判定を入れて、一気に人数を減らしてくるようだわ!」


 なんでも屋の深椥璃翠が声高に叫ぶ。その通りである。


 ここで一気に86人ぐらい減らしてやりたいので、がんばります!!




 成功者 76/85




 王城には邪悪な気配が満ちていた。


 まるで強力な邪霊に取り憑かれた幽霊屋敷のようだ。


 例えば歩いていると突然、飾られていた鎧が動き出し、斬りかかってきたりだ。


 これによって、勇者の壹岐野・コルト・イーナが横合いから斬りつけられて重症を負った。仲間は必死に手当てをしようとしたが。


「大丈夫か!? 痛いのはどこだ!? どこが痛いんだ!?」


 はいかいいえでしか答えられない壹岐野・コルト・イーナは口をつぐんだまま死んでしまった。


 畳屋主人の茶坊は突然飾られていた畳に「んー……なかなかの畳じゃのう」と目を奪われている間に、胸を刺された。体が程よくムキムキだったのに、リビングアーマーの膂力はそれをさらに超えた。絶命する。


 フルメイルのkkrrは、徴税吏員で知力もすごく高いのに、リビングアーマーに間違えられてパーティーの面々から袋たたきにあって死んだ。今まで一緒に冒険してきたはずなのに! そう、だって王国軍の緊張はピークに達しているからだ!


 ゴリス・レッドフィールドは職業がない。無職だ。通算何人無職がいたんだろうか……。外見が筋肉なので、もしかしたら人間じゃなくてただの筋肉なのかもしれない。じゃあそういうことになりました。ゴリス・レッドフィールドはただの肉です。焼いて食べたけど、なんかちょっと背徳的な味がした……。もしかして人肉だったんだろうか……。


 人カしたパクチーであるパクチーマンは前から大量に押し寄せてきたリビングアーマーの大群にひとり立ち向かい、その口に片っ端からパクチーを詰め込んで爆散させていた。パクチーマンの活躍によって残りのパーティーは生き延びたと言っても過言ではないだろう。パクチーマンよ永遠に!


 バーサーちゃんは狂戦士だ。狂戦士なのでゾンビを見るやいなや突っ込んでいった。どうして今まで我慢できたのかはまったくわからないんだが、もしかしたら平原での戦いで深入りしすぎて死んでいたのかもしれない。ここにいたバーサーちゃんは概念だ。概念バーサーちゃんは溶けて消えたのだった。


 クロースはナイスミドルな執事だ。長い廊下を歩いている最中、そういえばとクロースは思い出した。この近くの部屋に殿下の好物のノンカフェインのチョコラBBFeチャージがしまってある台所があったはずだ。ナイスな働きをしようとひとりこっそり向かった先で、クロースはスケルトンに出会い串刺しにされてしまった。あとわたしはチョコラBBが好きなのではなくて、24時間更新だから大量に飲んでいるだけなのだ……。


 バルスは無職だ。目がイってるだけの一般人だ。目がイってるだけの一般人が魔王、邪神、創造神、そして四天王たちとの戦いを乗り越えてここまでやってきたのだ。どうなったかはもうお察しだろう。そう、目以外の場所もイってしまったのだ。頭とか。バルスは窓から中庭に飛び込んでその生涯を終えた。


 黒覆面をかぶった火付け盗賊の白灰は、洞窟か可燃物のある所で爆発四散したかったらしいので、実は13話の洞窟でワープゾーンに入る前、後ろから大量に追いついてきた魔王の群れ相手に自爆特攻したのが黒覆面だったということにしよう。した。火付け盗賊という職業は決して人に誇れるものではなかったけれど、その勇姿は最期、皆の心に火をつけたに違いない。




 成功者 69/76




 おかしい。普段は王城もここまで大きいはずがない。もう一時間ぐらい歩いているはずなのに。


 これはきっと魔力によって空間が歪められているのだろう。


 さすが最後のダンジョンだけあって、手が込んでいる!


 ありとあらゆる危険が悪意をもって王国軍を殺害し尽くすのだ!



 


 みんな大好きヒナさんのそっくりさんであるヒナーは、あちこちをキョロキョロと見回していた。ヒナさんのそっくりさんだけあって、どんなときもヒナさんのモノマネはしなければならない。あ、向こうにゾンビさんがいる。そのときヒナさんだったらどうするか。ヒナーはゾンビに近づいていった抱きついた。「ぞ、ゾンビさんと目が合っちゃった! これはもうわたしのことが好き好き大好き超愛してるーってことですよねー!」 ゾンビはヒナーをがぶりとやった。死んだ。


 チキンあげおは緑のコンビニ店員だ。クリスマスのコンビニ店員なんて、重労働にきまっている。チキンあげおもまた、今は疲れ果てていた。もうチキンあげるの嫌だよ……とふらふらと集団から離れていって、誰かにぶつかった。「あ……っしゃーせー……」 顔をあげると、そこにあったのは拷問器具のアイアンメイデンだった。チキンあげおはアイアンメイデンに挟まれて死んだ。


 なっちゃんは農家のかわいい案山子だ。案山子なのでしゃべらない。案山子なので考えることもない。ただの案山子だ。案山子だ。なんで最終決戦の場に案山子持ってきてるんだわたしたち……という素に戻った殿下によって捨てられた……。王国が平和になったら、また拾いに戻ってくるから……。


 ねくはガーチャーだ。ア〇ゲイル1回引くのに4万飛んだ後の真っ青な顔をしている。ステータスは腕力2、知力2、体力2、不幸4だ。一応合計値が10ということで残しておいたのだが、不幸4はさすがに生き残れまい。不幸4って雷雨の日に天井に隕石が落ちてきてその空いた穴から雷が落ちてきて絶命はしなかったけれどフラついたらその場にワームホールが開いて飲み込まれて死ぬ、ぐらいの不幸度合いなのだから。じゃあそういうことになった。突然の死!!!


 キシリ=クリスタルは歯科医だ。歩いている最中、襲い掛かってきたスケルトンのあまりにも美しい歯並びにときめいてしまった。ああ、なんてきれいなんだろう。結婚するならこういう人がいい。黒髪ロングの大和撫子はおずおずと切り出した。「あ、あの……私、殿方にこういうことを言うのは初めてなのですが、私と……」 スケルトンはニコッと笑ってうなずいた。「こちらこそ、喜んで」 ふたりは幸せになった。ハッピーエンド!


 服飾店 針子兼店長のさち子は王国に恩を売って、自らの店を拡大するのが夢だった。殿下に襲い掛かってくるゾンビウルフの牙から殿下をかばって重傷を負った。彼女はそれでも笑う。「へっへっへ、あたしの夢、どうか叶えてくれよ……殿下、頼んだから、ね……」 殿下はさち子服飾店の名を未来永劫伝えるだろう。


 秋刀魚だ。食材である。実は1話で食材のすべてを使ったわけではなく、なんとなく宴のシーンとかで使う機会があるかなと残しておいた。コメントにも※万一生き残れたら、皆さんでお食べ下さい。と書いてあった。しかし生き残ることはできなかった。秋刀魚はゾンビ1284体に取り囲まれ、貪り食われた。いいなあ秋刀魚。秋刀魚たべたい。



 一時間が経過したけど、大して殺せなかった!!!!


 もういい、このままラスボス戦だ! 残り2話でなんとかまとめてやるぞおおおお!!! うおおおー!!!!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ