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24-2

 ミカミをやり、彼は今、大の字になって天井を見上げている。


「ごっついなあ、メイヤちゃんは。ホンマ、大したもんやわあ」

「つくづく貴方は変わった男ね。マゾなのかしら」

「ヤクザの親分にまともな男がおるかいや。しょうもないヤツばっかやぞ」

「貴方も含めて?」

「そういうこっちゃ」


 ミカミが上半身を起こした。


「なあ、メイヤちゃん、ワシと組まへんか?」

「組む?」

「ワシとアンタが一緒くたになって突っ掛かったら、『フー』かて潰せるやろうおもてな。恐らくそれは、メイヤちゃんが望むところでもあるんやないか?」

「勘がいいわね。その通りよ。だけど、『虎』の物量には、到底、敵わないでしょう?」

「まあ、実際のところは、そうなんやけどな」

「貴方にとって、『虎』はうっとうしいの?」

「うっとうしいってわけやないが、ワシの美学には反しとる」

「だったら、どうして直参なの?」

「この街でヤクザとして食っていくなら、『スーシン』か『虎』の仲間に入れてもろた方がええ。言わば、生きていくための知恵ってヤツやな」

「じゃあ、身を寄せる先は『四星』でもかまわないの?」

「いや。あそこはおかたそうや。せやから『虎』に付いたんや」

「ところで、貴方のところは子供にクスリを売っているの?」

「なんやねんな、いきなり」

「売っているの?」

「んなもん売るかいや。極道ってのは、道を極めるって書くんや。そこにガキどもが入る余地なんか、ありゃあせん」

「へぇ。案外、男気があるのね」

「男気うんぬんの話ちゃうわ。当たり前のことやっちゅうだけや」


 パトカーのサイレンが聞こえてきた。


「なんや。もう来よったんかいな。残念至極やな」

「でも、またすぐに出てくるんでしょう?」

「警察には知り合いが多いんや。ワシはこの街の警察が無能やとは言わへんぞ。金さえ払えば、話のわかる連中ばっかやさかいな」

「またいつでも相手をしてあげるわよ。貴方との喧嘩は楽しいようだから」

「ライバルとして認めてくれたっちゅうことやな」

「そんなたいそうなものじゃないわよ」

「メイヤちゃんの強さはワシ好みや。ホンマ、ゾクゾクするでぇ」


 ミカミがそこまで述べたところで、ホールを四人の警察官が訪れた。


 うち、一人の刑事らしき人物が「やれやれ、またか」といった表情を浮かべた 四人の警官を堂々と従えて、ミカミは悠然と退場する。彼は後ろに首を回すなり、「メイヤちゃん、またなあっ!」と声を張り上げた。「ワシがのす前に前に死んでくれんなやあっ!」と続けた。あるいはただの変態なのかもしれないけれど、興味深いニンゲンであることは事実だ。


 その後、支配人から謝礼が入っているであろう茶色い封筒を受け取った。「何卒、またお願いします」と言われてしまった。報酬は受け取ったものの、「また」はない。『キャバレー』の用心棒になるつもりはないのである。


 近付いてきたキャバ嬢の友人に「噂には聞いていたけれど、メイヤちゃんってば本当に強いのねっ」と弾んだ声で言われた。


「まあね。それにしても、あのミカミって男は」

「うん。変わったヒトなんだね」

「でも、面白い男だと思わない?」

「私はメイヤちゃんほど強くないから、迷惑でしかないよぅ」

「まあ、そっか。そうよね」


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