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23-2

 街中で、男と肩と肩とがぶつかった。こちらは半歩よけたのだから、向こうにも半歩よけてもらいたかった。なのに相手はチンピラよろしく絡んでくるだけ。非常識なヤツらしい。


「いてーな、ねーちゃんよぉ」

「わたしはちゃんとよけようとしたわ。まっすぐに歩いてきたそっちが悪いのよ。ところで、貴方はヤクザさん?」

「そうだよ」

「どこの組織のニンゲン?」

「カタギに言ってもしょうがねーかもしれねーが、『フー』だ」

「素直に答えるのね」

「別に名乗るなとは言われてねーからな」

「そっか。『虎』か……」

「知ってんのかよ」

「一応ね。それにしても、底が浅いわね」

「ああん?」

「ちょっと肩が当たったくらいで因縁をつけてくるなんて。そこらの三下と変わりないじゃない」

「死にてーのか?」

「そんなわけないでしょ」

「それにしても、ねーちゃん、えらい体してんな。ヤらせてくれるってんなら、ゆるしてやってもいいぜ?」

「ああ、男ってホント、そればっかり」

「やるってのか?」

「アンタ、ピストルは持ってるの?」

「そりゃあな」

「じゃあ、遠慮なく」


 わたしは男の顎に右肘をぶつけた。一発で仰向けに転がしてやった。周囲からは拍手喝采。男はなんとかといった感じで上半身を起こした。ビビったようで、しりもちをついたまま後方へと退しりぞく。


「目が眩むほど弱いわね」

「ウ、ウチに手を出したらたたじゃ済まないぜ」

「どういった目に遭うのかしら」

「軽口叩ぎやがって。てめぇ、命が欲しくねーのか」

「率直に言うわ。貴方達のアジトを知りたいの」

「そもそも、どうして俺達を敵に回そうってんだ?」

「気に食わないからよ」

「危ない橋を渡ることになるぜ」

「もう一度言うわ。アジトを吐いて」

「吐かねーっつったら?」

「こうするのよ」


 わたしは素早く距離を詰め、男の側頭部を蹴飛ばした。横っ面へのローキックだ。狙い通り、失神させることができたようだ。


 すると、周りからまた拍手。大したことをしたわけではないんだけどなあと思った。


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