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22-5

 『スーシン』の構成員を名乗る黒服の男が事務所を訪れ、ワンロンのところへと案内された。街中にある自前のビルの五階。その最上階に彼の居室がある。


「まったく、ラオファには困ったものだ」


 恰幅が良く、ぬえのような迫力があるワンロンは、すっかり禿げ上がった頭をつるりと撫でた。


「幹部を的にかけられているようね。ウェイだったかしら。彼にはそれなりの力と男気と覇気があったわ」

「やっこさんがやられたのは痛い。いずれは若頭に据えてやろうと考えていた男だからな」

「ユアンから聞いたわ。今になって、息子のソウロンを失ったことが痛手になっているようね」

「ああ。組のおさを務めるニンゲンに必要なのは、何を差し置いても人望だ。息子にはそれがあった。なんとも得難い資質だよ」

「現状、『フー』のほうが優勢であるように思うけれど」

「以前に依頼したことではあるが、なんとかしてラオファをって欲しいんだがね、探偵さん」

「ヤツを仕留めたい気持ちは確かにある。だけど、それってわざわざヤクザの言いなりになってすることじゃないわ」

「やれやれ。ワシはまだまだ退けんな」

「その歳になっても隠居できないとなると、まあ、頭が痛いところよね」

「だからこそ、『虎』についているラオファをを始末する必要がある。しつこいようだが、請け負ってもらえないかね。無論、報酬は、はずむ」

「何を言われたところで、ヤクザからの依頼を快く受けるなんてことはしないわよ」

「だが、これ以上幹部連中を殺されたらたまらんのだよ」

「いっそ、ラオファを取り込んでみたら?」

「目下のところ、『虎』のほうが資金力がある。かなわんさ」

「ふぅん」

「ワシはメイヤさんとラオファは同格だと思っている」

「お褒めにあずかり光栄だわ」

たびになるが、ラオファを是非、殺してもらいたい」

「殺すより、捕らえたほうが有意義でしょう?」

「それはそうだ。ラオファともあろう者を突き出せば、警察にとっても喜ばしいことだろうからな。その場合、ヤツらに恩を売ることができる」

「裏の世界の話って、つくづくしょうもないわね」

「そうかね」

「貴方は怯えるような人物じゃないと思っているけれど」

「それでも、少なからずラオファは怖い」

「貴方もニンゲンだってことね」


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