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22-3

 ヤクザ組織『スーシン』の構成員であるユアンと、街角で立ち話をしているところである。


「最近殺されてるのは、いずれもウチのニンゲンだよ。ソウロンの兄貴が亡くなって以降、まだ後釜は決まってないんだけどよ、若頭の補佐っつー立ち位置にあるヒト達が、次々にこの世とはおさらばってことになってる」

「若頭候補にだったら、ボディガードがわんさか付いていてしかるべきだと思けれど、やっぱり、ラオファが相手だと、数をこしらえたところで、意味をなさないってことね」

「そうみてーだ」

「親分のワンロンさんは怯えているのかしら」

「ウチの親父に限って、それはねーよ。むしろ、近々『フー』と一戦、交えるつもりなんじゃねーかな。もしそうなら、大戦争になるぜ」

「その際にはアンタも加わるの?」

「小鳥みてーにピーチクパーチク喚いたところで何も始まらねー。兵隊の一人として参加することになるだろうさ」

「ご愁傷様」

「ラオファを殺るにあたって、親父は手段を選ばねーって言ってる。きっとおまえにもお呼びがかかるぜ」

「報酬が発生するのは嬉しいけれど、そうでなくたって、わたしはラオファを仕留めるつもり」

「そりゃまた、どうしてだ?」

「面白い手合いだからよ」

「危なっかしい話だ。にしても、ソウロンの兄貴が生きてりゃあ、また話は違ったんだろうけどなあ」

「ソウロンは人望だけはあったみたいね」

「人望だけはって言い方は気になるけど、仮に親父が殺やられるようなことになったとしても、ソウロンの兄貴がいりゃあ、組織は一枚岩になると思うんだ」

「だったら早いとこ、彼の代わりを見付けるしかないわ」

「そうなんだけど、それが難しいんだよなあ。ここだけの話、若頭補佐のかたがたは我が強いっていうか、揃いも揃って個人主義らしいんだよ」

「だとすると、いくらワンロンさんとは言え、頭の痛いところね」

「そうなのかもしれねーな。だけど、ウルトラCがある」

「それは?」

「『虎』以上の金を払って、ラオファを取り込んじまえばいい」

「だけどそんな真似をしたら、下っ端連中からの不満が噴出するでしょう? だって身内を何人も殺されているわけだから」

「そうなんだよ。どうしたもんかなあ」

「なんにせよ、そんなことについて、アンタが頭を使う必要はないわね」

「俺が三下だからか?」

「その通り」

「ひっでぇ」

「わたしは、ラオファとは相性がいいって考えてる」

「そうなのか?」

「何せ、出会うケースが多いみたいだから」

「でもよぅ、実際、勝てそうなのか?」

てつはりが厄介」

「鉄針?」

「アンタは知らなくていい」

「殺られちまったら困るよ。俺はまだ、おまえとヤれてねーんだから」

「はいはい。言っときなさい」

「こえーよ、正直。俺がラオファと出会った日にゃ、ちびっちまうと思う」

「安心しなさい。たかが一構成員をやっているうちは、狙われるはずもないんだから」

「知ってるか? ラオファの姿を見たニンゲンって限られてるんだぜ?」

「まさしく幻の殺し屋ね」

「本当に、やられてくれんなよな」

「もっと気のきいたことは言えないの?」

「だったら、おまえの葬儀になんて出させてくれんなよって言っときたい」

「鉄針で殺されたら、どういう死体になるか知ってる?」

「知らねーけど?」

「刺されたところから血が流れ出るの。とめどなく、大量にね」

「想像するだけで鳥肌が立っちまう。キンタマも縮み上がっちまいそうだ」

「小物ね、アンタは、つくづく」

「だから、それは自覚してるっつーの」

「ドンパチが得意になることね。自衛をするには、それが一番」

「性に合わねーんだよなあ」

「だったら、ことに突き当たれば速やかに死ぬしかないわね」


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