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警察署に連絡を入れたところ、首尾良くミン刑事を捕まえることができた。「現場に部下を向かわせる」と電話口で彼は言った。「ウチの連中に引き継いだら事務所に帰ってろ」とのこと。
わたしは言われた通りにし、根城に戻った。するとそのうち、ミン刑事が訪れた。
「どうしたんですか?」
「またおまえの顔が見たくなってな」
「最近、顔を合わせてばかりいるように思いますけれど」
「まあ、そう言うな」
ミン刑事は客人用のソファにどっかりと腰を下ろした。
「コーヒーでいいですか?」
「ああ」
わたしはトレイを持ってテーブルにまで至ると、カップをミン刑事の前に置いた。早速、口を付けた彼である。
「インスタントでも、メイヤに振る舞ってもらえると、美味いもんだ」
「いつものひいき目ですね」
「本気で言ってるんだぜ?」
「ありがとうございますと言っておきます」
「宅配業者を装った強姦未遂。よくある事件だったな。ああ、まったく、その通りだ」
「犯人は女性が一人暮らしだと知っていたんでしょうか。それとも、行き当たりばったりの犯行だったんでしょうか」
「さあて、どうだったんだろうな。とにかく独り身の女が襲われた。それだけだ」
「ま、そういうことになりますね」
「今回、おまえがぶっ飛ばしたニンゲンをしょっぴいてやったわけだが、やっこさんは先の一件、すなわち、文通をやっていた女の殺害にも関与していると思うか?」
「その点については、今のところわかりませんね」
「まあ、実際、同一犯だろう」
「刑事としての勘ですか?」
「もしそれがハズレだってんなら、改めてそう伝えることにする。にしても」
「なんですか?」
「いや。女の一人暮らしはやめてくれって啓蒙する必要があると思ってな。危なっかしいったらありゃしねー」
「わたしだって一人ですよ?」
「おまえは別だ。こと喧嘩においては群を抜いてやがるからな。ただ、もっと積極的に鉄砲をぶっ放してもいいんじゃないかと俺は思う」
「極力、ヒトを殺したくはありません」
「言ったはずだぜ? その甘さが命取りにならないことを祈ってるって」
「やっぱり優しいんですね、ミン刑事は」
「おまえがヒトを殺したくないってんなら、殺したいヤツが現れたら俺に言え」
「おおよそ、警察官の台詞には思えませんね」
「おまえの頬の傷は、見るたびつらい」
「それは重々わかっています」
「マオがしくじったってんなら、俺が殺ってやる。俺がヤツを追い詰めてやる。だからメイヤ。何も心配するな」
「心配なんかしていませんよ。カッコいい男性二人に守られて、わたしは鼻が高いです」
「そうか?」
「はい」
「これからも仲良くしていこうな、メイヤ」
「勿論です」




