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14-3

 公安の男がまた事務所に来た。対面にあるソファにつくと、振る舞ってやったコーヒーを一口飲んだ。


「どうやら、シーアンの狙いは我々のようです」

「どういうことですか?」

「目下のところ、公安を目の敵にしているということです」

「何故、そう?」

「我々の部署には五人しかいないのですが、とはいえ、手前味噌な言い方をすると、少数精鋭です。私達は最重要人物として狼を追っている。それが面白くないのがシーアンであり、だからこそ、彼女は彼に心酔していると考えられる。そう予測しています」

「あるいは、シーアン氏が貴方の同僚をあやめたと?」

「ええ。二人、殺されました」

「彼女の仕業であることを示すような証拠があるんですか?」

「狼のあとを追うな。いずれの件に関しても、そのような一筆が現場に残されていました。筆跡鑑定で彼女が記したものだと特定できています。我々はその任務上、自宅の住所はおろか、電話番号すら秘匿しています。同僚に対してもです。だが、どうやら住まいは割れてしまっているらしい。どういった手段を用いたのかまではわかりませんがね」

「狼のあとを追うな。仮にそれがシーアン氏の本心だった場合、やはり彼女は単純に、狼を捕まらせたくはないんでしょうね」

「そう思われますか?」

「ええ」

「狼は無論のこと、シーアンの足取りすら掴めていないというのが実状です」

「それは自らが無能だとうたっているのと同義です」

「手厳しい」

「だって、そうだと思いますから。それで、貴方は私に何を望んでいらっしゃるんですか?」

「一緒に狼を捕まえてやろうという話を持ち掛けるつもりで馳せ参じました」

「わたしは狼を知っています。だからといって、協力しようとは思いません」

「何故ですか?」

「先日もお話ししました。彼に罰を下すべき人物がいるとするのなら、それはマオだからです」

「狼が国外に逃亡したケースはお考えですか?」

「勿論、その可能性は否定しません。となれば、あなたがたの捜査権限で調査できるとは思えません。しかしどうあれ、また状況がどうあるとしても、一所懸命に役割を果たすのが、あなたがた、公安の仕事なのでは?」

「そう言われてしまうと、その通りだと答えるしかないありません」

「時に、貴方には家族がおありですか?」

「いきなりですね。ご質問の意図はなんです?」

「いいからお答えください」

「結婚しています。娘が二人」

「でしたら、自衛を優先なさってください。シーアン氏がいつどこに現れるか予想がつきませんから」


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