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5-2

 夜。


 知り合いの売人であるユアンと、暗い路地で出会った。彼はヤクザ組織『スーシン』の構成員である。狭い路地にあって、指先を舐め舐め、札束を数えている。わたしは彼に近付いた。向こうもこちらに気付いたようだった。


「久しぶりね、ユアン」

「そうご無沙汰でもねーだろ?」

「何をしているの?」

「クスリの売り上げをちょろまかしてるところだ。それで金を数えてる」

「不真面目な売人だこと」

「ウチの組織はデカいからな。ちょっとくらい利益が減ったところで、わかりゃしねーよ。それで、なんの用だ? 何か訊きたいから声をかけてきたんだろ?」

「そういうこと。”蛾”って知ってる?」

「勿論、知ってるさ。ジャンキーには副作用として黄金の蛾が見えるっていうアレだろ?」

「アンタは売ってるの?」

「いや。”蛾”は仕入れ値からして高額だからな。売り値も高い。そうそう簡単に買ってくれるニンゲンなんていやしねーんだよ。同僚からもさばいてるって話は聞いたことがねーな」

「ふぅん。アンタんとこはシロってわけね」

「なんだよ。なんで”蛾”なんてもんに関わろうとしてるんだ?」

「刑事さんから仰せ付かったの。そいつの出所を探ってくれって」

「危なっかしいな」

「やっぱりそう思う?」

「平然と”蛾”をさばく連中がまともだとは思えねーよ」

「そういうことなら依頼を投げ出してしまえばいいとも考えるんだけど、一度、請け負っちゃった案件だから」

「コカインやヘロインを売って回る俺がフツウに思えるな」

「クスリを売るニンゲンがフツウなわけないでしょ」

「そりゃそうだけど」

「まあ、手当たり次第に当たってみることにするわ」

「死なねー程度にやれよ」

「そんなの当たり前じゃない」


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