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39-3

 帰宅したマオさんと、ソファの上で向かい合った。


「マオさん……」

「なんだい?」

「いえ、その、何かあるってわけじゃないんですけれど……」

「君は私の行動がいつも無駄骨に終わっていると思うかい?」

「正直に言っていいですか?」

「言ってごらん」

「尻尾すら掴めていないと思います」

「今日、彼が、とあるアパートから出てくるところを発見した」

「えっ、そうなんですか?」

「うん。彼は私の顔を見るなり、一目散に逃げたけどね」

「まだ逃げるんですか……」

「あちこちで警察が目を光らせているからね。その気配を察知してのことだったんだと思う。私とやり合うのを邪魔されるのは嫌なんだろう」

「”狼”が住んでいた部屋からは何か出たんですか?」

「綺麗さっぱり、何も出なかったよ。単なる寝床だったに違いない。アパートを管理している不動産屋も当たった。だけど、無人のはずだとの話だった。まったく、彼はどうやってそんな物件を見付けたんだろうね」

「どんなことについてでも、鼻がきくのかもしれませんね」

「少しは安心したかい?」

「えっ」

「私は何も無鉄砲に動いているわけじゃないんだよ。常に冷静でいるつもりだ。自分で言うのもなんだけど、とことんリアリストだからね」

「それは知っていますけれど。ということはです」

「ということは、なんだい?」

「マオさんには”狼”を仕留める自信があるということですね?」

「ああ。私と対峙した時、彼の人生は終わる」

「本当ですか?」

「うん」

「ホントにホントに本当ですか?」

「本当だよ。任せなさい」


 力強いその返答を聞いて、頼もしくなった。嬉しくもなった。飛び跳ねたいくらいだ。マオさんはやれるんだ。”狼”のことをれるんだ。彼が言うのだから間違いないんだ!


「マオさんっ」

「うん?」

「ウエディングドレスを準備していてもかまいませんか? かまいませんよね?」

「また、いきなりだね」

「わたし達は絶対に結婚するんです」

「そうなのかい?」

「そうなんですっ」

「まあ、それも悪くないかもしれないね」

「マオさんは子供が欲しいヒトですか?」

「そう考えたことはないなあ」

「てへへ。わたしもありません」

「どうしてだい?」

「二人きりがいいからです。子供は邪魔です」

「ヒドい言い方をするね。でも、そうなのかい?」

「はい。実はそうなんです」

「じゃあ、ゴムは付けないとね」

「わあ。スゴいことをおっしゃるんですね」

「君が言う以上、ナマはマズいだろう?」

「そうですけど、でも嫌です。この先もずっと、ナマがいいです」

「言っていることが矛盾しているよ?」

「できちゃったら、その時、また考えますので」

「私としては、産んでもらいたい」

「そうなんですか?」

「うん。できてしまったら、しょうがない」

「じゃあじゃあ、男のコがいいですか? 女のコがいいですか?」

「どっちでもいいよ」

「男のコだったら困りますよね。マオさんの斜に構えたところがうつっちゃったらどうしようって感じです。あー、でも、女のコでも困るなあ。パパ、パパとか懐くようだと、わたしはきっと嫉妬してしまいますので」

「こういう話は楽しいね」

「はいっ。だからこそ、わたしは”狼”の最期を祈っていますっ」

「安心しなさい。確実に殺して見せるから」


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