表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/155

36-2

 事務所に戻ると、マオさんはやっぱりデスクで新聞を読んでいた。彼にコーヒーを振る舞い、わたしは二人掛けのソファについた。


「何か目ぼしい収穫はあったかい?」

「ありませんでしたけれど、『フー』の連中と遭遇しました。無論、駆逐してやりましたけど」

「そうかい」

「はい」

「かつての『虎』のボス、サクライという男だったね。彼をったのは、私なんだけどね」

「ですけど、わたしも怨みを買っているみたいです」

「サクライと同じく、今のボスも武闘派だというわけだ」

「どうしましょうか」

「何をだい?」

「ヤツらが押し寄せてきた場合を考えて、マシンガンでも買っておいたほうがいいのかな、って」

「それは一理あるかもしれないけれど、物騒な銃火器は手元に置いておきたくないな」

「探偵だからですか?」

「その通り。私はしがない探偵だ」

「だけど、何かの間違いでマオさんが死んでしまったら、わたしはとっても困りますよぅ」

「私も君に死なれたら困る。やっぱり、マシンガンを二丁買おうか」

「そういうことなら、仕入れは任せてください」

「ちょっと見ないうちに、君は裏の世界に詳しくなったようだね」

「それだけ大人になったということです」

「頼もしい限りだ」

「でも、マオさんには敵わないだろうなって思っています。本当ですよ?」

「強くなければ、男じゃないだろう?」

「おぉ、その台詞はとってもカッコいいです」

「そうかな」

「そうですよ」

「でも、ヤクザの相手はもうしたくないな。キリがないから」

「そうですよねぇ。ところで、知ってますか?

「何をだい?」

「わたしが拘束されていた拷問部屋で、マオさんに突っ掛かった女がいたでしょう?」

「いたね。女性だから、少し手を抜いたつもりだけど」

「えっ、そうなんですか?」

「女性相手には本気になれないよ」

「でも、彼女は『虎』のお抱えである、殺しの達人なんですよ」

「まあ、やり手だとは感じたね。てつばりなんていう古臭い武器を自在に操るやからなんて初めて見た。」

「ラオファはお金で動くという話です」

「賢明だ。金は神様よりよっぽど信用できる」

「以前、ラオファも同じようなことを言っていました」

「興味本位で訊くけれど、『虎』の対極にあるある『スーシン』は知っているかい?」

「はい。ちょっとした経緯があって、ボスと面会したことがあります」

「ワンロン氏に?」

「さすがマオさん。なんでもご存じですね」

「なんでもは知らない。知っていることだけ知っている」

「ワンロンさんは物分かりのいいヒトでした」

「何を要求したんだい?」

「子供達にクスリを売るなと言いました」

「それを飲んでくれたとなると、なるほど、確かにワンロン氏は冷静な人物であるようだ」

「わたしは彼を信じています。というか、信じるしかありません」

「それはそうだ」


 わたしは深く吐息をつき、肩を落とした。


「様々なヒトにビラを配って、クスリを撲滅しようという啓蒙活動はしているんですけれど、あまり効果はないようです」

「その行為自体は間違いじゃない。日の目を見ることがなくとも、続けるべきだよ」

「そうでしょうか」

「君の活動は尊い。そして正しい。個人的な評価でしかないけどね」

「よしっ!」


 と気合いを入れて、わたしはソファから腰を上げた。


「これからビラを配ってきます。留守番、お願いしますね」

「『虎』の連中が動いているんだ。くれぐれも注意するように」

「わかってまーす」

「気のない返事はやめなさい」

「はーい。わかってまーす」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ